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□バレンタイン・トリップ
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「組分け帽子のヤツめ。
スリザリンにしてくれって言ったのに。」
ぶつぶつ文句を言いながらトイレの鏡の前でネクタイをきちんと締め直す。
でも…
緑がよかったけど、こうして見れば黄色もなかなか可愛い。
憧れのスネイプ教授。
いつ会ってもいいように身だしなみには少しでも気を配りたい。
少し跳ねた髪を手グシでザッと整えた。
「これでよし。
まあ、生徒としてトリップできただけでも奇跡だし贅沢は言ってられないね。
まずは作る場所を確保しよう。」
バレンタインデーに渡すチョコは断然手作り派。
道具だってこの通り。
使いそうなものは全てこのバッグの中に入ってる。
私はズシリと重いそのバッグを「よいしょ」と抱え地下へ向かう。
そう、地下へ。
今日は日曜日だから授業はないし教室は空いてるはず。
着いたらまず机をきれいに拭いて材料と道具を並べよう。
それからもう一度作り方の復習して…
おっと。
考えてたら地下牢教室に着いてしまった。
「うわ〜。ホントに陰気クサいなあ。あ、薬品棚がある。…これは何を漬けてるんだろう。こっちのも怪しい色だし…。これだけの数の瓶の中身を把握できるってのがすごいよねぇ…。」
教室に入るや否や先程までのシミュレーションは全て吹っ飛んでしまった。
気の済むまで色々な物を見て弄って、自分がトリップしてきた理由を思い出すのにかなりの時間を要した。
「あ、いけないいけない。
チョコレート作るんだった。材料を出そう。鍋にボウル、温度計…泡立て器、カップにスプーン、ラッピング用品っと。
…ん?…あれっ…?」
大量の道具を机に並べていくうちに大切なモノがバッグから出てこないことに気づいた。
私は慌ててバッグをひっくり返し、中を隈無く探す。
「ない!やっぱりない!
ありえないー!
肝心のチョコレート…
わ す れ た !!!」
昨日あれだけ確認したのにー!
し、仕方ない。
確認したって忘れたのは事実。どこかでチョコレートを調達しないと…。
そうだ。
厨房の屋敷しもべ妖精達にお願いしてみよう。
ちょっと分けてもらえるかもしれない。
そう思い立った私は道具を放置したまま、大広間に向かった。
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