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メルト;Melt
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貴方の為、だけに
想いを溶かして
心 を込めて 作るの
茶色、をした
良い馨り、のする
あまい あまい、お菓子
其れは




「ねぇ、Missイチハナ。今日の僕の講義(じゅぎょう)、は、」


そんなに面白く無い、のかな


大好きな優しい穏やかな声、で名前を呼ばれて気が付く、と
此処は闇の防衛術講義真っ最中、の教室の一角に位置する机、だった。
顔を上げる、と其処には

背が高く細身で
人柄と同じく温かい色彩の服装
鳶色の柔らかな髪の男性、こと

闇の防衛術担当リーマス・ルーピン教授(せんせい)が
穏やかな顔、と共に
苦く笑む姿

物珍しそうに
事の為り行き、を
見つめる同級生 の
スリザリン、蛇寮生
はじめ
合同授業、の相手
グリフィンドール、獅子寮生
の姿 が見えた。

ホグワーツ、で私の郷里 で
バレンタイン、に行われる
在る風習、の噂が流れはじめたのは
つい最近、になってから。



女性は「在るお菓子」と共に男性に想いを伝える



私 にとっての其のお菓子、は
ある”特別な人”を連想させるもの 
でしか無くて。

でもきっと
其の方 は色々な其のお菓子、を食して
舌が肥えていらっしゃるであろう事、は
容易く想像がついたけれど

少し でも自分の想い、を込めたくて。

連日厨房にて必死に思考して奮闘の結果、が
其の”特別な人”との時間、の此の失態。

私は俯き
頭の中 で自分を撲殺したい気分、に駆られながら

「申し訳ありません、教授(せんせい)・・・」

至極哀切で満たした顔つきと声、で伝う。
其れを聞いた教授、は穏やかな笑み、と共に

「何かに熱中するのは悪い事ではないけれど、」

講義で眠ってしまわない程度、にね

柔らかな声で伝いながら、講義を再開した。
其の心地よい声、の響きに誘われるやうに
私は再び眠り、に堕ちていった




「また眠ってしまったんだね、大丈夫?疲れている処に申し訳無いけど、」


講義が終わったら、少し残ってくれるかな、Missイチハナ


の言葉と共に二度寝、を程無く発見され

「直ぐに医務室に連れて行きたい処だけど・・・もし良かったら、」


疲れが取れるよ


の言葉と共に差し出された
茶色をしたあまいお菓子、と
良い馨りのする温かい紅茶

御礼を伝いながら口にする私、に

「無理に訊こう、としている訳ではないのだけど・・・良かったら、」


其の熱中している事、の内容を教えてくれないかな


柔らかな笑みと共に教授(せんせい)からの声、が掛かる。
如何してですか、不思議そうに問う私、に向かい

「僕の講義、では”寮監である我輩の講義より熱心”、とセブルス、否
スネイプ教授に云われる位一生懸命で眠った処なんて見せた事の無い君、が、」


其処まで夢中になれる事、が何なのかとても気になって、ね


私の薄水墨白淡の瞳、と色は全く違う
もっと綺麗な澄んだ色の瞳、で
優しいけれど端整な顔、からじっと見つめる教授、に

「御心配お掛けしてすみません、教授(せんせい)・・・でも、理由をお話するのは、」


もう暫く待って、いただけますか


伝う私、に向かい

「そう・・・では其の時、を」


楽しみに、しているね


云いながら再びお菓子の山、を薦める教授 に
其の優しさ や 気遣い は
皆のもの、だと解ってはいるけれど
今 だけ は独占したい
願わずには居られない ひと時

「そろそろ所用、がありますので、失礼します、教授、」

お茶の御礼、を云い
本当は後ろ髪ひかれながら も
そんな様子、は見せずに教室、を出
今日も私は厨房へ 向かう
貴方(せんせい)へ、の想いを込めた
今 一緒に食べてきた
茶色いあまいお菓子、を作りに



ねぇ、教授(せんせい)
此れ、を渡して
理由と共に
想いを告げたら
此れから ずっと
其の 何時も一緒に居る
あまいお菓子達、と同じ様に
お傍に置いて くれますか?



思いながら 数日後
厨房、には
一生懸命製菓に励む私、と

「其れ、はもう少しこうした方が良いよ、ミウ。そして、」


楽しみだな・・・大好きな君、から貰える初めての、贈り物


何時の間にか後ろに立ち
優しく私を抱き締め
耳元で伝いながら

頬一面 を 薔薇色に
染めた私 を

柔らかい眼差し
優しい顔、で
見つめる ルーピン教授、の姿




貴方の為、だけに
想いを溶かして
心 を込めて 作るの
茶色、をした
良い馨り、のする
あまい あまい、お菓子
其れは



End.
 
 
 

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