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□バレンタイン前夜
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ウサギ「わぁーん!どーしよーう!」
そう叫んで、ウサギは開いたままのブラウニーのページに突っ伏した。
ウサギ「ぜんっぜん決まらない・・・。キューリーちゃん、どーう?」
目の前に積み上げられたレシピ本の山へ呼びかけると、その向こう側からキューリーの頼りない声で返事が返ってきた。
キューリー「ダ、ダメです・・・私に作れそうなものがありません!どうしましょう・・・」
――2月13日
グリフィンドールの談話室の一角を陣取り、ウサギとキューリーは同じ様なやりとりを、もう何度も繰り返していた。
ウサギ「こんなことなら前もって考えておけばよかったー・・・」
自分の何気ないひとことで、異常な盛り上りにまで発展してしまったバレンタイン。
その原因である本人達は、作るチョコレートも決まらず、半ばパニック状態に陥っていた。
“バレンタインお目当てのキャラクターにチョコレートを渡しちゃおう☆”
そう三人で決めたのは1ヶ月以上も前の事。
時間はたっぷりとあったはずなのに、その間一体何をしていたのか、気がつけばバレンタインは明日に迫っていた。
「いっしょに探せば、いいのがきっと見つかるよ!」
そうお互いを励ましあうウサギとキューリーの横を、作り終えたチョコレートをローブの中にこっそりと隠して談話室に帰って来た女の子達が通り過ぎて行く。
気に留めないようにはしていても、明日へのドキドキを押さえきれない女の子達のクスクス声につい反応してしまい、気が焦るばかりだ。
キューリー「ウサギさん!ウサギさん!!」
突然キューリーが身を乗り出して話しかけてきたので、ウサギは読んでいた本を危うく落しそうになった。
先程まで、同じ様に困り果てた表情をしていたはずキューリーが顔を輝かせている。
ウサギ「どうしたの、キューリーちゃん」
キューリー「つ、ついに見つけたんです!!私用のお菓子作りの本を!!」
そう言ってキューリーは持っていた本の表紙をウサギに向けた。
ウサギ「ぶ き っ ち ょ さんの・・・」
ピンク色の表紙に書かれていた本のタイトルを読んでウサギは思わず吹き出してしまった。
【ぶっきっちょさんにもできる簡単手作りチョコ】
確かにキューリーの為のような本である。
ウサギ「あはは!キューリーちゃん、いいの見つけたねぇ。これであの人にチョコを渡せるね♪」
キューリー「はいっ♪」
キューリーはピンク色の本を大事そうに抱えた。