キズナ


□第9話『famille』-後編-
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―――家族のように、兄弟のように。
そうやって一緒の時間を過ごしてきた。

でも少しずつオトナに近づくにつれて思い知らされる。

一本の道を一緒に歩いてきたように見えていたのに、その道は別々の方向へ伸びているのだということを。

その道がふたたび交わるのかそうでないのかは、その道の上のオレ達自身にも分からないということを―――。




*****
<−side 万里−>

ーーーみんなが帰った後自分の部屋へと戻ったオレは、机の上に置いていた進路希望調査の紙を手に取りベッドにダイブした。

さっき立ち聞きしてしまったとーちゃん達の会話が頭の中によみがえる。


(…オレは結を応援してやらなきゃ。結もきっとそれを望んでる)


オレは仰向けのまま持っていた調査用紙を顔の上にかぶせた。
目を閉じると暗い闇が全身を覆う。

―――だがバタバタという足音とドアを開ける音でオレの意識は現実に引き戻された。


千「万里くーん?明後日とーちゃん帰っちゃうんだよー?下で家族団らんしようよー?」

「…とーちゃん、近い」


顔を覗き込むとーちゃんを避けながらオレは体を起こした。


千「あれ、これ進路希望調査じゃないか。もう志望校決めたのか?」

「…まぁね、大丈夫だよちゃんと考えてるから。んじゃお茶でも入れて家族団らんしましょうかねー」


そう言って起き上がろうとしたオレの腕を、とーちゃんはいきなりぐいと掴んでそのままベッドに押し付けた。


「…ッ!」

千「生意気な口聞いても力じゃまだまだとーちゃんには敵わないな?」

「何だよイキナリ!?実の息子押し倒して、どーいうシュミしてんだッ!」

千「こうでもしないと話聞こうとしないから、おまえは」

「…何だよ、話って?」

千「おまえはコドモだよ、万里」

「…は?」

千「コドモはワガママで甘えるもんだ。だからおまえももっとワガママになって甘えてもいいんだよ」

「…急に何言って…訳わかんないよ、とーちゃん」


―――真っ直ぐにオレを見てくるとーちゃんを直視できなくてオレは顔を逸らした。


千「自分の進路を自分で決めるのはもちろん大事な事だ。でも人生は自分一人で生きていけるものじゃない。 不安に思うことは周りの人間にちゃんと伝えてもいいんだ。してほしいことがあるなら相手に言ってみるのもいい。もっと周りの人間を巻き込んでもいいんだよ、万里」


―――そんなコト言ったって、そんなのオレのガラじゃないよ。

そう言いかけてやめた、いや言えなかった。
なぜなら心の奥ではずっと、本音はきっと―――。


千「とーちゃんやマリエさんだけじゃない、万里の周りにはおまえを見守ってくれてる人がいっぱいいるだろう?多少ワガママ言ったって、みんなおまえの事を受け入れてくれる人達ばかりだよ」



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