キズナ
□第1話『始まりの場所』
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「…変わんないなぁ、この辺も」
5年振りに歩く自分の生まれ育った町。
この角を曲がると――あった、あたしの家だ。
「ただいま」
久しぶりの我が家。
真っ暗な家の中には当たり前だけど誰もいない。
―――それが5年前とは違うところ。
あたしが家に帰ってきても誰も迎えてくれない。
しかも1年後にお父さんが日本に帰ってくるまでは、この家にあたし1人きりの生活なのだ。
(…家にいるのかな、平ちゃんと万ちゃん)
窓の外にはお隣の家の温かそうな灯りが見える。
本当は今すぐにでも会いに行きたい。だけど、少し怖い。
あたしの事怒ってるんじゃないだろうか。
2人に何から話せばいいんだろう。
不意に寂しさに襲われて暗闇の中で膝を抱える。
「…平ちゃん、万ちゃん、早く会いたいよ」
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万「平、明日の始業式は寝坊すんなよ?」
平「わかってるよ!…でも家には迎えに来てね、万ちゃん?」
万「ハイハイ…あれ?」
平「ん?どした?」
万「いや、トナリ、家ん中電気付いてた気がして…」
平「結んち?気のせいだろ。…アイツ元気かなあ、今頃何してんだろ?」
万「ここ1年、ぱったり手紙来なくなったしな。いつになったら日本に戻ってくるんだろな…」
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