蒼色デイズ
□#4.不機嫌な放課後
1ページ/12ページ
高校生活がスタートして一週間が過ぎた。
入学式の日以降、今日までずっと一滴の雨も降らない晴天続き。
「奈津?」
こんな青空の下で、思いっきり土を蹴って走る時ほど気持ちの良い事はない。
気分は自然と上機嫌―――なハズなのに。
「ね、奈津ってば」
「…あ、ゴメン弥生。何?」
「ホラまたココ」
「へ?」
「超シワ寄ってるんですけど」
隣に座った弥生に顔を覗き込まれ、ツン、と眉間を突かれる。
「…そんなに?」
「うん。すっごい怖い顔になってる」
―――こんな青空の下、あたしにそんな顔をさせるのは、間違いなく数日前の放課後の出来事が原因に違いなかった。
#4.不機嫌な放課後
「休憩終わりー!次、50Mダッシュ5本!」
ピーッという笛の音と先輩の声を聞いて、肩にかけていたタオルを弥生に手渡して立ち上がった。
行ってらっしゃい、と笑顔で手を振る弥生に見送られてスタートラインの前に立つと、2年の男子の先輩がちらりとこちらを見た途端、一歩後ずさりした。
「か、顔怖ぇーよ、青鷺」
「ヤル気の表れです、気にしないでください」
気にしないでおこうと、そう何度も考えようともしたけれど―――無理なハナシだよ、やっぱり。
ふたたびピーッと鋭く笛が鳴ったのを聞いて地面を強く蹴った、そして思った。
あたしってば、まだスタートラインに立ってすらなかったんだな、って。
.