蒼色デイズ
□#3. I do like “xxx”
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〈入学式当日〉
こんなハズじゃなかったんだ、オレの高校生活は。
「花シマダぁ、バスケ部の部室行ってみよーぜ」
「あぁ?今日は入学式だぞ?部活なんてやってないだろ」
「一応だよ一応。2、3年の誰かいるかもしんないし。いたら挨拶しとこーぜ」
今思い返せばあんなコト言い出さなきゃよかった。
そうすれば何も知らずにオレは今頃楽しくバスケットボールを―――いや、遅かれ早かれバスケ部に入ってしまえばあの“悪魔”には出会ってたんだろうか。
「あら、鍵閉まってんじゃん」
「そら見ろ!オレ様の言った通りだ」
「ちぇー、体育館が使えなくても筋トレかランニングくらいしろよなぁ。ヤル気のねぇバスケ部だな!」
せめてあの時花シマダと一緒に引き返していれば。
悪夢のようなあんな目に遭わずに済んだのに。
「誰かいないかオレちょっとその辺見てくる」
「ってオイ、もうじきホームルーム始まるぞ?」
「すぐ戻る!」
―――色々諸事情があったとはいえ、緑高を蹴ってまでわざわざこの東聖に来たからには、絶対にオレがココのバスケ部を強くしてやるって、そう思ってたのに。
迷う心を叱咤激励して、そう自分に言い聞かせてきたのに。
*****
(…お?不用心だな〜)
花シマダから離れて部室棟の裏手に回ったオレは、男子バスケ部室の窓が細く開いてることに気付いた。
窓まで近付いて窓の隙間から部室内を覗いてみたものの、厚手のカーテンが引かれているせいか中の様子は薄暗くてよく見えなかった。
(…やっぱ誰もいねーかぁ。仕方ない明日出直して…)
『…もしかして入部希望の新入生?』
「…えっ!?あっ、ハイ!」
『部室の鍵開けたから。入ってきていーよ』
―――こうして“悪魔”はオレに囁きかけたのだ。
#3. I do like “xxx”
「…失礼しまーす」
部室のドアの前に戻った時にはもう既に花シマダは見当たらなかった。
だからオレはひとりであの部室に入った。
―――あの薄暗い、悪魔の巣の中へ。
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