蒼色デイズ
□#2.恋敵〈ライバル〉は誰だ?
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あたしの好きなヒトには好きなヒトがいる。
「リューちゃんっ!」
「あ?なんだよ朝っぱらから」
いや正しくは好きなヒトが“いた”、という過去形なのか、そこがどうも曖昧なのだけれど。
「春休みに貸した英和辞書返して、あたしも今日から授業だから」
「おーわりィわりィ。すっかり忘れてたわ」
その曖昧な情報元はひとつ年上のもうひとりの幼なじみ―――片想い相手の実の兄。
「わざわざあたしに借りなくても実の弟に借りればいいのに」
「アイツのは落書きだらけで見づらくて仕方ねーんだよ。あ、でもソレいいな。奈津、おまえワザと忘れて学校でアイツに借りれば?」
「…いい。そんな見づらい辞書あたしも借りたくない」
―――去年の冬、リューちゃんがその情報をぽろりと口にした瞬間、あたしは誰の目から見ても明らかなほどに動揺した。
そしてリューちゃんにバレた。
その場にいたのがリューちゃんだけだったのがせめてもの救いだった。
「ンだよ、ガンガン行くんじゃなかったのかよ?アイツ追いかけてわざわざ同じ高校に入っときながらよー」
「しっ…しーっ!!リューちゃん声大きいっ!」
*****
―――あの日以来、リューちゃんはこうして何かと親身(?)にあたしにアドバイスをくれるのだけれど。
一方でリューちゃんが持ってる情報をもっと詳しく教えて欲しいといくら頼んでも、リューちゃんは何故かはぐらかす。
だから今のあたしにわかっていることはふたつだけ。
#2.恋敵〈ライバル〉は誰だ?
―――ひとつめ、トラは片想いをしていた。
そしてふたつめ、その片想いの相手は“アマノ”という子なのだという。
毎晩うなされるくらい、部屋でふさぎ込むくらいの、本気の片想い、らしい。
でもね、悪いけど、自慢じゃないけど。
片想い歴の長さは、あたしの方が上だから。
想いの強さは、トラなんかのそれよりも、あたしの方がずっと上なんだから。
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