蒼色デイズSS

□オトナ男子の憂鬱
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「オトナ男子の憂鬱」
(長編夢第6話時、GW前。虎目線)



高校生は中学生よりもオトナだ。
だからそんな男子高校生なオレ達の会話も、中学生のソレと比べれば少しばかりオトナ色が強くなる。



「うわぉ♪ナニそれ、高橋おまえの?」

「いーや。あの棚の奥にあったヤツ」

「マジ?漫画だけじゃなくてそんなのも置いてんだ、この部室」



練習を終えた2、3年生達が帰った後の部室は、練習プラス片付けを終えた1年生達の“憩いの場”となる。
そんな空間内で、不自然な程に身を寄せ合い輪になって床に座り込んでいる同級生部員達を、オレは真上から覗き込んだ。



「何やってんだ?」

「お、鷹丘。おまえだったらこの中でどれがイイ?」

「オレぇ?どれどれ?」



ウチの部で、天野以外の1年生では唯一彼女持ちの鈴木からその“雑誌”――いわゆるエ○本てヤツ――を受け取り中身を吟味する。



「うーん…イマイチだな。オレの好みじゃない」

「いやいや、次のページ見てみろって」

「何なに?何見てんの?」



―――背後から聞こえた天野の声はオレに即座にその雑誌を閉じさせた。



「何でもない。おまえには遠い世界の物語だ」

「何だよそれ、見せろよー?」

「あれぇ?タカオカくんったら部室に何持ち込んでんのかなぁ?」



天野に見られないように頭上に掲げていた雑誌は、後からやって来た日下にいとも簡単に奪い取られた。



「なんか年季入ってんなぁ。どんだけ愛読してたの?」

「オレのじゃねぇし。どうせ2、3年の誰かのだろ」



―――と、答えた所でページをめくる日下の手元をマジマジと見つめている天野に気付いてなんともいえない気分になる。



「…おまえもそーいうの興味あるんだ」

「うん、それなりに」



キッパリ即答した天野を前にしてさらになんともいたたまれない気分になるものの―――まぁここまでは中学生同士でもよくある話なワケで。
高校生にもなると、この場にオトナの“実体験”の話が加わるのだ。



「この中で“済み”のヤツっているの?」

「そりゃあ彼女持ちに真っ先に尋ねるべきトピックだな」

「おい!そーいう話題を天野に振るなッ!」

「んじゃあ鈴木サンはどんなカンジなんスか?」

「んーまぁ…でも今の彼女とはまだ全然そーいう空気になんねーなぁ。まだ付き合って3週間くらいだし」

「“今の”ってなんだよ、“今の”って!」

「オレが知りたいのはおまえだよ、日下。実際のトコどーなんだよ?」

「さぁどうでしょう?」

「白状しろ!経験値ナシでそんな余裕のオーラを身にまとえるワケねーだろ!」



―――東聖だってそこそこの進学校なハズなのに、周りの友人達の頭の中はこーいう話題でいっぱいだ。
日本史や世界史の授業よりも、今のオレ達にとってはこーいう話題にこそ壮大なロマンを感じる。



「経験値と言えばさぁ、ウチのキャプテンのスゴい噂聞いた?」



女子並みにゴシップネタに精通している佐藤がふと思い出したように口を開いた。



「高校入ってからカウントしても20人は軽く超えるってよ」

「マジで?さっすが紺野先輩!」



(何がさすがだ、ただの見境ない女好きなだけじゃねーか)



頭の中に浮かんできた紺野のニヤけ顏をムカムカしながら追い払う。
実際にムカつく話、紺野はモテる。
奴目当てにバスケ部の練習を見に体育館まで来る女子生徒も少なくない。



「確かにイケメンだもんなーあの人。オレもたまにドキっとするもん」

「はは、紺野先輩なら男でもオッケーしそう」



―――見境ないのが男に対してもなのだとしたら相当恐ろしい話だ。
入学式の日の出来事を思い出して鳥肌が立った腕をさすっていたオレに、日下が満面の笑みで声を掛けてきた。



「危うく21人目になるトコだったな、タカオカ」

「言うなッ!っておまえなら言うと思ったけど!せっかく忘れようとしてんのに!」

「あぁ鷹丘がキャプテン達に襲われかけた話?いいじゃん別にあの二人なら」

「うんうん。新橋先輩カワイイし」

「オレの立場で同じコトが言えんのかおまえら!」



なんだか話題が色味を変えてきた。
違う、オレが思い描いていた明るく健全な男子高校生がするのはコッチ系の話題じゃないハズだ。

ただ意外なことに、この話題を元の路線に戻してくれたのは天野だった。



「でもさぁ…紺野先輩のソレって20人とちゃんと付き合ってたってこと?それとも…」

「いや先輩のことだから“そん時限り”ってのもフツーにあるんじゃないの?」

「あるいは短期間で別れてすぐまた別の女のコと、なんてできたら十分ありえる数字だよな」



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