雑誌

□あなたへ祝福を
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あの時は、あんまり天気が良かったので外で本を読んでいた。

今、思えば子供にはとても重い本だったか。





――読み始めてどれくらい経っただろう。




いきなり母に呼ばれ、訳が分からぬままに付いて行く。

辿り着いた先は、よく本を読んでくれた姉の様な人の家で。

母に促されるまま、我は家の中に入った。



目に飛び込んだのは、ぐったりと横たわるその人。

我は慌てて走り寄った。


「お姉さん!!
……病気…なのか…?」


あまりに顔色が悪かったので、我は勘違いしたのだ。
その人は苦笑して、軽く顔を横に振る。

そして、我が居る方とは反対の方を指差した。

我はなんなのか、と思いその人越しに覗いてみる。


そこには、触ればすぐに壊れてしまいそうな小さな赤子が眠っていた。

名はオキクルミというらしい。


「…オキクルミは、もしかして……」


その人は、そう、と幸せそうに微笑む。

そういえば、この頃お腹が大きくなっていて、運動も控え目になっていたことを思いだした。

知識はあっても、赤子というのを初めて見るので、ついまじまじと見入ってしまう。


すると、側でじっと見守っていた母がいきなりオキクルミを抱き抱えて我に差し出した。

我は訳が分からず固まってしまう。

そんな我に、母は痺れを切らして無理矢理抱かせた。

あまりに小さいので、怖くて抱き方が危なっかしい。

オキクルミの方も寝心地が悪いのか、ぐずり始める。


「あぁ、泣くなっ;」


我はどうにかしてあやそうとオキクルミを覗き込む形になる。

その拍子にオキクルミの前にかかる我の髪。


くん、と引っ張られる気がして何事かとオキクルミの手を見ると、我の髪がしっかりと握られていた。

助けを求めるように母を見たが、くすくす笑うだけで助けようともしない。

掴まれるのはかなり困るが、そのお陰でオキクルミが落ち着いてくれたのには、ほっした。


それでも、このままでいるわけにはいかないので手を外そうとするが、放してはくれない。

だからといって、無理矢理外そうとすればオキクルミは泣きそうになる。



……これは本当に困った…;



その様子を見ていた母が、ついには腹を抱えて笑い出した。

キッ、と睨むと目許の涙を拭いながら、外を指差し“何かを代わりに握らせなさい”と言う。

それは、良い対処方だと思ったが、まだ笑いながら良い言うのはいただけない。

「……はい…」


渋々、我はオキクルミと一緒に外に出たのだった。





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