雑誌
□硝子玉よりも尚、美しく※×
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「お前の目は旨そうだな」
一瞬、なんと言われたのか分からなくて、サマイクルは目をしばたたかせた。
………今読んでいた行が分からなくなった。
細かい文字が集まりすぎているため、容易に見つからない。
諦めて本を閉じたサマイクルは、引き攣り気味に笑いながら問題発言をした男を見た。
なにをいきなり言い出すんだ、こいつは…。
「……オキクルミ?」
できれば、空耳であって欲しいという願いを込めて名を呼んだ。
オキクルミはなんの返事もしない。
だが、その目は真っ直ぐに見つめてくる。
……サマイクルの目を。
あまりにも熱心に見つめてくる為、どうしても冗談だろうと笑い飛ばすことが出来ない。
サマイクルは、その目からどうにか逃れられないかと、座ったまま後退る。
すると、オキクルミも同じだけ前進する。
それを何度か繰り返していると、サマイクルの背が壁に当たった。
一人しか住んでいない家である。
際なんてすぐそこだ。
逃げることが出来ないのは目に見えていたのに。
それでも、逃げずにはいられなかった。
サマイクルが逃げられないことを良いことに、オキクルミはゆっくりと近づいてくる。
もはや、獲物を追い詰めている獣にしか見えない。
その後ろには唯一の逃げ道である出口が。
嫌な汗がサマイクルの頬を伝った。
「おい、こっちを見ろ」
「っ?!」
顎を掴まれ、ぐい、と真正面を向かされる。
遠くを見ていて、オキクルミがもう目の前まで来ていることに気付かなかった。
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