雑誌
□あなたへ祝福を
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オキクルミの家の薬草が尽きてきたのを知ったサマイクルは、嫌がるオキクルミを無理矢理連れていった。
ーー探し始めて数時間。
サマイクルは、それなりに薬草を手に入れることが出来て満足していた。
ふと、片隅に彼岸花が咲いているのに気がつく。
次の瞬間、昔の記憶が鮮明に甦った。
手折られた彼岸花。
伸ばされた小さな手。
懐かしいと、思った。
「そういえば、オキクルミはこんな季節に産まれたのだったな…」
サマイクルは足元にも咲いていた彼岸花を折り、近くに居たオキクルミに差し出す。
「……おめでとう、オキクルミ」
そして、ふわりと微笑んだ。
その微笑みは、オキクルミが産まれたことを心から祝福していて…
言葉よりも
差し出された花よりも
…その笑顔が
オキクルミの心に響いた。
「……ありがとう…。
彼岸花とは…お前にしては洒落ているな」
花を受け取ったオキクルミは、照れ隠しに憎まれ口をたたく。
だが、サマイクルは気にする風も無く、ただ楽しそうに笑った。
「お前、覚えていないのか?
………まあ、お前は産まれたばかりだったからな…」
そして、サマイクルは独り言の様に昔の事を話し始める。
それは、サマイクルとオキクルミの初めての出会い…。
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