強奪・押付話
□それは誰の為だったか…※
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何処か切り離せないものがあったのかもしれない
「…………で??テメェは何で此処にいやがんだ」
「んー、暇潰し??」
「ああそうかい。テメェが暇潰しに来ようがストーカーしに来ようが知ったこっちゃねェがその手をまず離せ」
明らかに身動きが取れないように捕まえているその手を睨み付ける
「離したら逃げちゃうだろう??ユーは」
全く意に介した様子もなくウシワカは答える
「当たり前だッ!!!テメェなんかに構ってられっか!!!この変態野郎!!!!!」
「お褒めに預かり光栄の至り」
「褒めてねェよ。テメェはもう月へ帰りやがれッッ!!!!」
その言葉を叫んだ瞬間、ウシワカから表情が消えた
「………―――――」
怒り、悲しみ、絶望、恐怖、不安…………
それら全てが目の前の奴の表情に表れていた
イッシャクは言葉を失い、そして同時に言い様のない罪悪感に見舞われた
慌てて、弁解の言葉をつむぎだす
「ち、違っ……今のは………」
次の瞬間、相手からは溢れんばかりの笑い声が生まれた
「あっはははははは」
「な――――――、テメェッッ………!!」
「ユーは面白いね」
顔は笑っているし、言葉にもからかいが混じっている
だが、ウシワカの表情が、無理をして作っているように思えた
「っ、なんなんだよ、お前は!!!!!」
「!!?」
叫べばウシワカは目を見開いてイッシャクを見る
「お前は、お前はなァッッ……いっつも馬鹿みたいに余計な事考えてやがるからそんな事になりやがんだ!!!!!辛いなら辛いって言いやがれ!!!!んな泣きそうな顔して笑われたって誰も嬉しかねーんだよ!!!!!」
長い台詞を言い終わって息を切らしたイッシャクに、初めてウシワカは少し表情を崩した
俯いて、苦しそうな顔をして、涙を浮かべていた
「ごめん……」
「っわ……おい??」
ぎゅっと抱かれて、イッシャクは戸惑いの声を上げる
「もう少し、このままで……」
「ふん……」
全く、世話の掛かる野郎だ
イッシャクは声に出さずに呟いた
「もう行くよ」
ウシワカがイッシャクから離れて、そう告げた
表情は心なしかすっきりしている
「あ、」
そこでイッシャクは思い出したように懐を探り、一枚の絵を差し出した
「餞別」
ウシワカが半ば無理矢理に押し付けられたそれを広げて見た
「………っ、これ」
「かっ、勘違いすんなよ!!!?アマ公が描けっつったから描いただけだ!!!たまたま懐にあっただけなんだからな!!!!」
必死に弁解するイッシャクにウシワカは笑った
絵には、見事な天照大神とウシワカが描かれていた
「サンキュー、イッシャク」
「っ…………」
ウシワカが居なくなってからイッシャクは溜め息を吐いた
「………別に、どピンク野郎の為じゃねェし………」
熱くなった自分の顔を誤魔化すようにそう呟いたのは、一体誰に向けた弁解なのだろうか
(終)
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