暗殺教室
□野球の時間
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【第2話:野球の時間】
「アメリカでも月の爆発の話題ばかり。もっと楽しい一面記事が欲しいですねぇ」
「…日南ちゃん、あそこだよ」
『あれって今ハワイで話題のハワイアンジュースじゃない?ほら、フルーツたっぷりの!』
「「そっち!?!?」」
朝から潮田君と杉野君に呼ばれ、ついて行ってみるとそこには優雅にジュースを飲みながらアメリカの新聞を読んでいる先生がいた。
正直先生よりもジュースの方が気になってしょうがない私。
杉野君は何故か朝からはりきっていて、野球ボールにB.B弾を埋めたお手製のボールで先生を殺す!と言っているけれど………
『マッハ20の先生なら、杉野君の投げるボールのスピードを見切って受け止められそうだけど…』
「やってみないと分かんないって!」
「頑張ってね、杉野!」
「おう!百億円は俺の物だ!!」
結局そのまま杉野君は投げてしまい、潮田君と私はそれを見守ることにした。
野球部のピッチャーだった杉野君のボールのスピードは確かに早かった。
凄いなぁと思ったその瞬間。
「おはようございます。渚君、杉野君、日南さん」
『…殺せんせー』
「声が小さいですね。さ!挨拶は大きい声で!」
後ろを振り向けばそこには既に殺せんせーの姿があった。
私は殺せんせーの触手にグローブが握られているのを見て、瞬時に作戦は失敗したと確信した。
隣にいる杉野君は今だに状況を理解していなかったので、どうしてこうなったのか説明してあげた。
『杉野君の投げたボールは、やっぱりマッハ20の殺せんせーには遅く感じたみたい』
「そんな…」
「先生の弱点、対先生のB.B弾をボールに埋め込むのは良いアイディアです。でもこれでは直接受け止めることは出来ない」
『だからマッハ20の速さで倉庫にあったグローブを持ってきて受け止めたってことですよね』
「正解です。ついでに倉庫の壁にかけてある根性の文字が曲がっていたので、直しておきました」
自分の作戦は失敗したのだと理解した杉野君は、肩を落としながらトボトボと歩いて校舎に戻って行った。
それを見て慌てて後を追いかける潮田君。
私は二人を追うことはせず、殺せんせーに向き合う。
『さっきのボール、ちょうだい』
「何をするつもりですか?」
『杉野君に返すの』
「本当にそれだけですかねぇ」
殺せんせーの顔が黄色と緑のボーダーに変わった。
(相変わらず憎たらしい顔してる)
『実際に見てないから本当かは分からないけど、きっとこのボールは杉野君なりに一生懸命作ったんだと思うの。だから本人に返して、それでまたこのボールで殺って欲しいなって、そう思っただけ』
「日南さんは仲間思いですね」
そう言って殺せんせーは、うんうんと一人で変な納得をして私にボールを渡すと校舎に戻って行った。
その場に残された私は思わずポツリと呟く。
『仲間思い、ね…』
そう言って私も三人の後を追うように、校舎へと戻って行ったのであった。
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