□冬の匂いに君の優しさが混じってる
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【冬の匂いに君の優しさが混じってる】



霜が降りるような、寒い冬の日だった。学校から帰ると家の中は暖房が利いていて、どこかほっとする。自室へ入り、いつものように身に纏った防寒着を脱ぎにかかった。ほどいたマフラーはグレーの毛糸で編んであり、この手には馴染みがないものだった。そっと顔に寄せてみると、甘いコロンの香りがふわりと鼻をくすぐった。



あいつ、香水なんかつけてやがんのか。



あいつとは、忍足侑士のことだ。今日の部活の後、俺が日誌を書く間、忍足に教室まで荷物を取りに行かせた。戻ってきた忍足はちゃっかり俺のカシミアのマフラーを首に巻いて、いかにも気に入ったように言うのだ。



「跡部のマフラーやーらか〜い。あったかー。何かええにおいもするー。」



「当然だ。お前のとは違うんだよ。」



日誌を書き上げ、机の引き出しにしまう。身支度を済ませ、忍足を見た。俺のマフラーはまだ奴の首に巻かれたままだったからだ。



「はい、跡部。」



俺の首に毛糸のモコモコした違和感が巻きつけられていく。痒いような気もした。



「俺の貸したるし。明日返してな。ん、結べたで。帰ってよーし。」



後頭部でマフラーの両端がきつい結び目の為にはね上がっているにちがいない。俺はそのことに文句も言えず、ただ何と言っていいかも解らないから鼻で笑った。忍足は満足そうに微笑むと、頬にひとつ、キスをしてくれた。






俺は忍足のマフラーを首に下げたまま、ベッドにうつ伏せに倒れ込んだ。枕から顔を上げ、マフラーの端を手にとり、そこにまた顔を埋めた。



普段、抱き締められたときに嗅ぐ忍足の匂いが、この香りの隙間に残っている。今あいつが側にいる気がして、こんなことをしている自分がいて、今さら照れている自分に思わず笑ってしまう。



「何やってんだ、俺は・・・。」



明日の朝もきっと冷える。


そしてマフラーを巻くだろう。




fin.









あとがき



久々に甘い話書きました(^^)ちょっと痛いかなーなんて思ったりしないわけでもないんですが、それは愛嬌で。



お読み頂きありがとうございます。



結花

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