文
□世界の果てまで
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お前が行くというのなら
どこまででもついて行こう
お前の助けとなり
お前の導となり
世界の果てまで
供に行くだろう
命果てる迄
【世界の果てまで】
君がいてくれてよかった。君に助けられて俺は頑張れる。今までも、これからも。
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「真田!」
先を行く真田を見つけて、幸村はほのかな幸せを感じた。はやくその手で幸せを確かめたくて真田に駆け寄る。振り向いた真田は少し驚いたようだった。
「幸村。」
「珍しいな、真田と学校以外で会うなんて。」
本当にその通りだ、と幸村は思った。幸村は自分たちほどストイックなカップルはいないと自負している。学校、部活では勿論のこと、休日でも真田とデートすることは数えるほどしかなくて、こうして偶然に会えることが素直に嬉しい。互いに思いを我慢しているわけではないと思うが、それでもやはり真田に気を使っていることは否めない。もちろん幸村も欲に溺れるつもりはない。今は互いに共通した大切なことがある。いつでも心を占めるのはテニスのこと、部活、全国。その熱い思いがふたりを固く結び付けているのを知っていたのだ。
「どうしたんだ?」
「え?」
「顔が赤い。」
「そうか?走ったからだろ。」
「うむ。」
歩きだそうとする真田を幸村は遮った。顔を急激に接近させ互いに視界には相手の瞳しか入らない。
「言わせたいのかい?」
「?」
「俺の顔が赤い理由をさ。」
顔を離した幸村は真田の肩をかわして歩きだした。和かな笑みをそのままに。しかし慌てた真田が腕を掴んだせいでよろめいてしまい、肩がぶつかる。幸村は視線を真田に戻した。
「何?」
「それだけか?」
「は?」
「いや、今日のお前は覇気が足らん。何かあったんじゃないか?」
(覇気って…真田をけしかけることに対して?・・・・ふ、違うか)
真田の瞳は真剣で、とても笑い事とは思えない発言だった。多分これが真田の優しさ。触れた肩に真田の手が添えられる。大きくて温かくて、幸村の好きな手。でも、
「・・・真田には隠せないな。」
幸村の細く小さなため息が真田にもわかったのか、真田は幸村の肩にかけた手を戻さなかった。彼は幸村のことが本当に心配なのだ。たとえ幸村が真田に何かを隠しても、真田はそんな幸村を一喝するようなことはしない。だけど真田はまっすぐ射抜くような瞳で問いかけてくる。そうして伝う真田の思いは強すぎて、それが幸村をときどき不安にさせる。
真田は強い
なのにどうして、
俺の欲はこんなにも果てしないのだろう
「今日、真田のところに行っても構わない?」
ようやく発せられたことば。真田は幸村の弱さも拒まない。そんなこと、幸村には解っていたが彼は黙って返事を待った。
「ああ、構わん。」
ほっとして、幸村はいつものような微笑みを取り戻した。
ふたりで並んで歩きだす。
「ふ、説教は無しだからな。」
「当然だ。」
こうして弱さを見せなければ抱き合えないなんて、なんて弱いのだろうと、突然幸村は吐き気にも似た自己嫌悪を感じた。
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『おまえらほどストイックなカップルはいない。』
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