文
□THE GIRL
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「すーずし〜。」
向日が校舎の入り口の扉を開くと中から凍るような冷気が漂ってきた。それでも汗を流して熱を持った身体には心地よかった。
「へー、夏休みでもクーラーつけるんやな、ありがたい。」
後に続いて忍足も中へ入る。廊下を進むとクーラーの機械音と風の吹き込む音が響いていた。「階段だりぃ〜。」と文句を言いつつも、向日の足はのろのろと階段を登り始めた。
「ちぇーっ、いつもは跡部が持ってくくせに何で今日だけ。」
部誌を掴んでいる向日の右手がぶらぶらと揺れていた。
「そら練習に遅刻した俺らが悪いんやし。でも部誌の担当で済んで助かったわ。今日の跡部相当機嫌悪かったのに。」
今日の練習で跡部は終始イライラしていた。向日と忍足への説教もいくらか長かったし、嫌味もくらったが、予想に反し外周を走らされずに済んだ。
「もしこんな炎天下で走らされてたら俺やる気なくすで、ほんまに。」
「はは、ゆーし道外れてさぼってそう。」
窓の向こうには、陽炎の立つようなグラウンドを走り回るたくさんの生徒が見えた。夏休みとはいえ、活発に練習している運動部だらけでグラウンドは忙しい。一方で校内には静寂が、普段では見ることができない光景が生まれる。そこにはある意味空虚さからくる涼しさがあった。
「つかクーラー利きすぎ!汗冷える。」
それを聞いた忍足が何かを企んだように、にやけた。
「ほな競争する?4階まで。んで、負けた方が部誌を出しに行く。」
「げッ。まじかよ、ゆーし!?・・・って、おい!ずりーぞ!」
向日の返答も待たずに忍足は駆け出していた。
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