their...
□prism lumiere
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もうその腕は限界だった。
咄嗟に少年が男の腕を掴んで転落は避けられたものの、今その腕には2人分の体重と重力がかかっている。
彼らの下方に広がるのはフツフツと熱気を放つマグマ。
もう誰も死なせないと叫び、腕に最後の力を集中させようとする少年に
「だからお前は…甘いと、いうのだ−…」
男は、自然と穏やかな顔になった。
急にふっ…と手から力を抜いた一瞬で男は少年から離れ、
その穏やかな笑みのまま白い煙に吸い込まれていく。
諦め
満ち足りて
その気持ちはそういう言葉ではなく、ただ、少年から見える光を消してしまうのは惜しいと思ったから…。
「ジェナス…お前にもっと早く出会っていればあるいは…」
「ガン・ザルディっ…!!オレは――っ、オレは忘れてない!」
「…っ…?」
落下先のマグマからの煙と遠のく意識で霞む視界に、男はもう何も捉えることはできない。
それでも、もう姿も捉えられない少年の声に、途端に彼の脳裏に映ってくるのはそれはいつの記憶だったのか。
あれは――……