箱庭
□ハッピーバレンタイン〔狂い人より〕
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街がいつも以上に華やかに見えるこの日、2月14日。
そう、バレンタインデー
どうせ貰えないことは分かっていても、なんとなく心がウキウキしてしまう、嫌な日。
そして今日は、ある人間から逃げ回らなければならない日でもある。
そんなこんなで僕は今、公園のドーム型の滑り台の中に、体操座りでいたりする。
まぁ、逃げられるはずもないのだけれど…。
ふと、ため息をつく。
「あっ、フーちゃん見っけ♪」
「げっ、早っ…!」
「うぃ?なんでそんな不幸そうな顔してるのかなぁ?」
「おいっっ失礼じゃないか!キララ君っ!!」
「あっ間違えた。嫌そうな顔だった。」
「いや確実にわざとだろ…というか嫌がらせだろ!?」
今日はバレンタインのせいでテンションが上がっているせいか、ツッコミのテンションもいつもの3割増しくらい上がっている。
「それにしても…どうしてバレたんだ…?」
「フーちゃんみたいな引きこもり君の行動範囲なんて、考えるまでもないよぉ。」
「引きこもりぃっっ!?おいっ!失礼じゃないか!!」
「引きこもり君にぃ?」
「僕にだよっっ!!」
「えへへぇ♪」
パァッと、向日葵のような笑顔を浮かべる
ハクジョウウン
“白城雲 キララ”
太陽の光を受け、白い髪はキラキラと星のように輝く。
綺麗で綺麗で、そこに視線がいくと、キララはドームの中に入ってきた。
一緒に体操座りをする。
「…狭いねぇ、フーちゃんのお家。」
「おぃっ!!失礼じゃないかっっ!!」
「フーちゃん、今日はそればっかだね。去年は“きゃっほーい☆”だったのに。
その前は“うへへぇ君可愛いね”だったよね♪」
「いつ僕がそんなキャラになった!?誤解されるだろ!!」
「えっ…」
「待て待てぇい!!そんな“そういうキャラじゃなかったっけぇ…?”みたいな顔をするなっ!!」
キララはツッコミを入れてもらい、嬉しいのか笑顔を浮かべ、視線を僕からコンクリートへと移した。
黒い瞳が、薄暗いドームの中ですら目立っていた。