箱庭

□君にズッキュン☆
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「俺は、お前にズッキュンなんだよ…!!」


学年一のおバカの不良が、学年一の秀才メガネの俺様に、そう告白してきた。

多分、ゾッコンと言いたかったのだろう。
訂正する気すら起きない。


「……」


返す言葉すらない。
無視して参考書に再び目を落とすと、おバカがキャンキャン吠えだした。


「えっ、何でムシぃ!?なんか言えよぉ…!!ノーでもいぃんだぞぉ…?」

「…お前の性別は?」

「うぇ?お、男だけど…?」

「そう。そして俺も男。」

「…だからぁ?」

「考えるまでもなくNoだ!ありえん!!」


そんな…とショックに打ちひしがれるおバカ。

そんなおバカを残し、俺は図書室をあとにする。




なんだって俺は、あんなおバカな不良に目を付けられたのだろうか。

大体、なんであいつは学ランを着ているんだ。
ウチってブレザーのはず…

あと金髪で、いかにもヤンキーですという派手さなのに、何故か前髪が結んであって、デコ丸出し…。


色々と突っ込みたい所はあったが、あんなバカに構ってられる程、暇じゃない。
今日は買ったばかりの問題集をすべて解いてしまわなければいけないからな。


それにしても俺は、なんていい奴なのだろう。
あんな低能な奴と口をきいてやるなんて。
しかも間違いを正してやった。

やはり俺様は、そこらへんの奴と出来が違うな。



そんなことを思いながら、バカ共がじゃれあってうるさい廊下を歩く。

本当に、バカしかいない。
はしゃぐことしか出来ないのか?
少しは俺様を見習え、バカ共め。




そんな俺が人と口をきいたのは、久々だった。


別に、こっちが無視をしているのだけれど、周りの奴らは俺様の頭の良さに嫉妬し、入学以来、話しかけてこない。

まったく、天才に生まれると苦労するものだ。



だから本当に、珍しいことだった。

何故、あいつは話しかけてきたのだろう。
俺の何処を好きになったのだろう。


まぁ、俺は完璧な男だからな。
惚れられるのが当然というか、必然というか。


さぁ帰って勉強だと、今日も俺は独り家に帰る。





―続く―

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