箱庭

□雨の中鳴いている
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なんで?

なんでこうなっちゃうのかな…




本降りを始めた空。

店に置き忘れた傘。

僕は雨に濡れる。




Tシャツが肌に張り付き、靴の中は水浸し。


水を含んだジーンズは重く、足取りも重い。


嗚咽は雷の音で掻き消され、涙は雨に流される。




このまま全て、流れてしまえ――――




彼が今までくれた言葉も愛も、全て流してしまいたい。

そしたらきっと、また笑顔で会えるんだ。







女を好きになってしまった君。

僕への愛を勝手に終わらせた君。


人生どうなるか、本当に分からないものだ。





「ごめん」なんて言わないで。

そんな言葉で終わせるなんて、卑怯だよ。





『けど、お前のこと好きだから、ずっと一緒にいて?』

俺だって好きだよ。

けど、どんな顔して一緒にいればいいのさ。

あの女の話しをする君の顔なんか、見たくもない。


僕の心が裂けちゃうよ。






だけど僕も、君を傷付けた。

「二度と姿見せんな!!」

そんなことを言って、店を飛び出してしまった。



言うべきじゃなかった…

だから君は、追いかけてくれないんだよね…





色んなことに後悔して、最終的に君と出会ったことが間違いだったなんて、悲しい答えを出す僕。

それは違うって分かってる。



けど思うんだ。

こんな思いをするなら出会わなければって。



お決まりだよね…

そんなお決まりのことを思うほどに、僕は現実に打ちのめされていた。





恨みたい。

恨めない。

まだ君が好き―――




そんなバカな僕は、

雨の中鳴いている。








end
 

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