本編

□第十四話
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     俊は


 自分が死んだ後の事を


   考えたことが

   あっただろうか









あれから3年が経った。



俺にはもう、希望なんてない。



君が全てを奪って逃げた。









脱け殻のようなって、家に閉じ籠り 過ごす日々。



思い返して何度も涙する自分。



手首には いくつの傷を作り、首にはアザが残っていた。





  今日はどうしよう


    どうやって

  君の元へ行こうか





睡眠薬も刃物も、ロープも全て、組の人に没収された。



服も、着ているパジャマ以外ない。



それにこの服は、すぐに破れるように出来ていて、使い物にならない。



ここまで徹底してやられると、死ぬのは無理だ。





ため息が出た。





窓の外の景色は、俺の心を晴れさせようと、必死に青空を広げていた。





涙が流れた。





俺は君の名を呼び、叫ぶ。


こんなことを何度 繰り返せば、俺の心は満たされるのだろうか。














「また口付けてねぇのかよ…」



「直人さん、今日も食べてくれないんスかね…。」



「仕方ない。今日は俺が押さえてやるから、お前がしろ。」



「は、はぃ。でも、いーんスかね…木村さん…。」



「こいつが生きるためだ。しょーがねぇだろ。」



「そっスね…。

 じゃ、点滴の道具、持ってきます。」





遠くなる足音と、男のため息が聞こえた。



布団を捲り、その男の姿を見る。





「…木村さん、今日も来てたんですか…。」





そう言うと、男はまた、ため息をついた。





「なんだ、起きてたのか。

 まったく、忙しいのに来てやってんだから、お礼の1つくらい言えよなぁ。」






この茶髪に長身で、ちょっとチャラい男は、組長の右腕の『木村 隆哉』(38)さんだ。



何かと俺の世話をしてくれている、とてもウザイ人だ。





「別に、頼んでませんけど。」



「うわ!可愛くねぇーなぁ!!」



「もうすぐ33になる男に、可愛いとか必要ないですから。」



「もう38だけど、俺はちょープリティーだぞ!」



「…木村さんって、よくウザイって言われません?」




「ハッハッハーッ!!残念ながら、そんな事一度だって言われたことないぞ!

 そう言いたそうな顔はされるけど!!(涙」



「あっ、分かりました。木村さんって、可哀想な人なんですね。(頭が)」



「(頭が)って何だよ!!」





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