本編

□第十二話
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   あの日は雨が

    降っていた






何もせずに、ただゴロゴロとベッドの上を転がっていると、電話が鳴り出した。



ザーッという雨音が、少し小さくなった。




俺は、すぐ止むだろうと電話を無視する。








雷が2度落ちた。



しかし、どちらも遠くに落ちたらしく、その振動は届かない。








雑誌を拾い、パラパラと見てみる。



まだ鳴り止まないベル。



見飽きた雑誌を、放り投げる。







雨の音、雷の音、そして電話の音がやたらと耳につく。



うるさい。



どれも止む気配がない。



仕方なく、重たい体を起こして、受話器を取る。







「はい…もしもし、どちら様ですか…」





ダルそうな自分の声。



それとは正反対の、明るい声が返ってきた。







『あっ俺、俺。』



「…詐欺ならお断りします。」



『いやいや俺だって!!“林田 国見”!!』





そういえば、聞いたことのある声だった。





「あぁ。…何か用?」



『別に用って程じゃねぇんだけど…その…今日の夜さ、お前 暇?』



「年中暇だけど。」



『そっか!じゃあ、今日の夜7時に迎えに行くから、一緒に飯でも食いに行こうぜ!?』



「ん、いーよ。」



『よし!んじゃ、またなぁー!!』



「はーい。」





受話器をすぐに置く。



こうして国見と出掛けるのは何度目だろう。



時間がある度に電話して、誘ってくる国見。




俺のことを心配してのことだろうが、俺は何とも思えなかった。


感謝の気持ちも、喜びでさえ、出てこない。



別に放っててくれてもいいのに。



そんなことしか思えない自分が恐ろしい。






「7時か…。」






ベッドの側にある、目覚まし時計を持ち上げる。





まだ12時だ。

約束の時間まで7時間もある。


何をしていよう。





見たい映画のDVDも見終わったし、1人で神経衰弱も飽きた。



散歩しようにも、この雨だ。



本当に何もすることがない。







寝てしまおうか…そう思ったら、また電話が鳴った。


すぐ近くにいたこともあって、今度はすぐに手を伸ばし、受話器を取った。






「もしもし、どちら様ですか?」





きっと国見で、何か言い忘れたことでもあったんだろう。



しかし、中々 返事が返ってこない。



いたずらか?





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