本編
□第十一話
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夢の中にいながら、自分の体が浮いていることに気付く。
誰かが運んでくれている。
誰?
うっすらと目を開けると、そこには俊の顔があった。
あぁ、やっぱり戻ってきてくれた…
安心したからか、俺はまた、夢の世界に飲み込まれる。
夢の中で、ピンク色のウサギが走り回り、緑色の鳥がそこら中を飛び回っていて、俊がこっちを見ていた。
暖かい目。
口元には笑み。
俺は彼の名を呼び、彼は手を差し伸べた。
そして2人の手が重なり、ぽぅっと光を放つ。
温かい、本物の温もり。
これは現実?夢?幻?
ギュッときつく、俊の手を握りしめる。
すると俊の手が、スルリと抜けた。
そして俊の体が無数のカラスになって、次々に飛んでいく。
“消えないで俊、
俺を1人にしないで”
叫んでいるはずなのに、声は響かない。
手には
黒い羽が残っていた。