本編

□第十一話
2ページ/5ページ





夢の中にいながら、自分の体が浮いていることに気付く。



誰かが運んでくれている。




     誰?




うっすらと目を開けると、そこには俊の顔があった。



あぁ、やっぱり戻ってきてくれた…



安心したからか、俺はまた、夢の世界に飲み込まれる。











夢の中で、ピンク色のウサギが走り回り、緑色の鳥がそこら中を飛び回っていて、俊がこっちを見ていた。




暖かい目。


口元には笑み。





俺は彼の名を呼び、彼は手を差し伸べた。



そして2人の手が重なり、ぽぅっと光を放つ。


温かい、本物の温もり。




これは現実?夢?幻?




ギュッときつく、俊の手を握りしめる。



すると俊の手が、スルリと抜けた。




そして俊の体が無数のカラスになって、次々に飛んでいく。





“消えないで俊、

 俺を1人にしないで”





叫んでいるはずなのに、声は響かない。






    手には

 黒い羽が残っていた。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ