本編

□第十一話
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俊がいなくなり、俺は何もする気がなくなった。


ただ毎日ボーッと、窓から外を見るだけ…。



俊に会いたい 会いたいと思うだけで、捜そうとしない自分。





俊がいなくなって、何ヵ月過ぎただろう。


2人の誕生日が迫っていた。







くぅ…と、お腹が鳴る。


そう言えば、昨日の昼くらいから、何も口にしていない。






「何…食べよ…。」






最近、2日に1食というペースになってしまった。



しかし冷蔵庫の中は、もうすぐ空になる。



そろそろ買い出しに行った方がいいかもしれない…。




そういえば、外に出たのって、1ヶ月くらい前かも。


でも今日は外に出たくないな。

と言うより、動きたくない。





あぁ、今日はもう食べないで寝ようかな。






ゆらりと立ち上がる。



すると、窓の端に黒い影が見えた。



ドクッと胸が音をたてる。




“今度こそ”俊かもしれない




そう思って俺は、フラつきながら外へ飛び出した。






「俊!?俊!俊っ!!」






裸足で走り回る。



でも、彼の姿は見当たらない。





あぁ…今日も違った…






「俊…。」






夕焼けが空に広がり、俺はその下にポツリと立っていた。



そこで今、夕方だということを知った。


もうすぐ今日が終わり、明日になる。




でも、君はきっと、明日になってもいない…


ずっとずっと、俺は孤独なんだ。







「しゅん〜…」






俺は急に、子供のように泣きじゃくる。



そのまま、その場に座り込んで、わんわんと泣き叫ぶ。

もうすぐ28になる男が、こんな外で。



まぁ一応、自分の家の敷地内ではあるけれど、人目にはつく。





でも、そんなの関係なしに、俺は泣いて泣いて泣いて…泣き疲れて眠くなった。




電池が切れたように、芝生の上にパタリと倒れ込む。




薄暗くなってきた。




このまま寝てしまいたい…。



ゆっくり瞼を閉じる。




あぁ、風邪ひいちゃうかもとか思いながら、俺は芝生の上で寝てしまった。





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