本編

□第十話
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「ねぇ俊、それは死ぬために?」



「かもな…。」





俊は笑った。



その笑顔は悲しかった。





「だから、お前とはもう会えない。」



「どうして?抗争に出るからって、会えなくなるの?」



「お前を、巻き込む訳にはいかない。」





眉一つ変えず、君はそんなことを言う。



そんな君に、俺は怒りを覚える。





「言い間違えだ。変なの。“会えない”なんて…。」



「言い間違え?」



「だってそうだろ?

 “会えない”じゃない。 会わない”じゃないか…。」






体が熱くなる。



それと同時に、泣きたくなる。




どうしても、怒りと悲しみが、くっついて離れない。





ムカついてるんでしょ?




悲しいはずない。





なのにどうして?



どうしてこんなに悲しいの?




どうしてこんなに、





  泣きたくなるの?







「何が巻き込む訳にはいかないだよ…カッコつけんなよ…。

 いいじゃないか…何がダメなんだよ…!俺なんかっっ…巻き込んだっていいじゃないか!!」







俺は叫んだ。



すると、左頬に痛みが走った。



火花が散る。




俺は俊に殴られていた。





地面に転がる。



血の味がする…。





すかさず俊は、俺の上に乗ってきて、俺の胸ぐらを掴んだ。






「どうしてお前はいつもそうなんだよ!!どうして俺のこと考えねぇんだよぉ!!

 俺がっ、俺がどんなにお前のこと心配してるか、知らねぇくせに!!お前は…お前はぁ!!」






怒鳴りながら、俊は右、左と俺の頬を殴る。



地面に唾を吐くと、真っ赤だった。




俺は、今にも泣き出しそうな俊を睨む。






「だったら、お前だってそうじゃないか!!」






俺は俊を蹴った。



俊が地面に転がると、俺はその上に乗り、今度は俺が俊を殴る。






「お前のことずっと考えて!心配して!!

 なのに、なんで勝手にもう会わないなんて言うんだよ!!

 なんで、そんなこと言えるんだよぉ!!」






拳が痛い。

気持ちが悪い。





あぁ、こんな事したくないのに。





聞きたくないこと聞いて、したくない事して。








    俺はもう

 壊れてしまいそうだ





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