本編

□第十話
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俊が、黒いコートを羽織り、外に出ようと言い出した。



やっと自分で家事が出来るようになった、次の日だった。



何かを決心した彼に、俺はついて行くしかなかった。





少しパラつく雪。

積もる前に溶けてしまう。



触れようと手のひらを広げるが、触れる前にフッと、姿が消える。




君は触れさせてもくれないの?







「俊。」






黒い背中に声をかける。



立ち止まり、俊は振り返る。






「何処まで行くの?」



「…公園。」



「なんで?」



「……」






彼は何も言ってくれなかった。


また歩き始める。




そして公園につくと、彼はブランコの前で足を止め、何も言わずにブランコに乗った。






「あのさ…俊、子供じゃないんだから…。」





そう言うと、彼はやっと口を開いてくれた。





「直人、子供ってなんだ?大人ってなんだ?」



「はぁ?それは…」





俺は答えられなかった。




まるでナゾナゾのような問い。


でも誰も答えを知らず、又、答えなど始めからなかった。



考えてもいけない。



だってそれは、出口のない迷路なのだから。







「ホラ、答えらんねぇだろ?皆そうなんだ。

 俺のことガキだって言うくせに、こう聞いたら何も答えなくなる。」






キーッという音をたてながら、俊はブランコを動かした。


何処かサビているのだろう。



この公園自体、少しサビついているように思える。






「どうしたの…?急にそんな話して…。今日の俊、なんか暗いよ?」



「もう分かってるだろ?」



「分かんないよ。」



「いや、お前はもう分かってる。」



「…分かんない…」





分かりたくもない。




俊はブランコから降りて、俺の目の前に立った。






「直人、分かってくれ。

 お前がどんなに俺の事を止めようとも…俺は抗争に参加する。」



「…まだ…抗争、始まってなかったんだ…。」






引き止められたと思っていた。



家にいる俊を見ていて、もう行かないんだろうと思っていた。




 あぁ…違ったんだな…





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