本編

□第九話
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「俊、キャッチボールしようよ。」



「…なんで?」



「いや、暇だから。」



「まぁ…そぉだな。やるか。」






俊は立ち上がり、読んでいた本を机の上に置いた。



その本は経済について書かれた本で、とても難しそうだった。





俊が、俊でないような気がする。






「グローブとかボールとか、何処で買うんだ?」



「あぁ、家にあるよ。」



「なんで。」




「いや、暇だったから、前買ったんだよ。

 でも1人じゃキャッチボール出来ない事に気付いて、一度も使わないまま倉庫に仕舞ったんだ。」




「ふーん…。直人って、意外とバカなんだな。」



「天然と言え!!」



「お前の髪ストレートだろ。」



「えっ、あぅ…。」






やっぱり、いつもと変わらない俊だった。











倉庫からグローブとボールを取りだし、俊と一緒に外に出る。




   今日は晴れ




もうすぐ冬がきて、雪が降る。





あぁ、時なんて、経たなきゃいいのに。






「なんか…どんどん寒くなってきたね。」





俺はマフラーを首に巻きながら言った。



俊はサングラスをかける。





俊の雰囲気がガラッと変わる。




黒いYシャツにGパン。




いつもよりはカジュアルな服装だけど…






「やくざ みたい。」



「やくざ だもん。」





  2人で笑い合う。




歩きながら交わす会話。






「そういえばさ、もしかして俊って、組長の息子?」



「そぉーだけど?」



「“そぉーだけど”って軽っ!!じゃあ…俊って、次期組長!?」



「さぁ。てか“実の”じゃねぇんだよ。本当の親父は死んだらしーし。なんか組長は俺の親父の友達だったとか…。」




「へ〜…そうなんだ。」






俺はてっきり、組長さんが本当の父親なんだと思ってた。




…まぁ、何となくなんだけど…。






「てか俊、寒くないの?」




俊の服を掴む。




「えっ、これ一枚しか着てないじゃん!!寒いだろ!?」



「ん?そぉーか?」



「ホラッ俺を見てみろ!!マフラーぐるぐる巻きだぞ!?暖かいぞぉ!?」





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