本編

□第七話
2ページ/7ページ






「俊、別に同じ物選ばなくていいんだよ?」



「…安いから。」



「お金の心配しなくてもいいよ?」



「安いから、たくさん買える。」



「………」






多分、店としては、コレよりもっと高い品を買って貰った方が嬉しいんだろうな。



でも、こんなに安くしてるって事は、早く処分したいって事なのかな?





本気でそんなことを考える。



正しい答えなんて、知らないのに。








「何個買う?」




取り敢えず、自分の分をカゴに入れる。






俊は、


「あるだけ全部。」


と言って、ドサドサッと、かき氷をカゴの中に入れた。






カゴの中には、かき氷の袋が山積みになった。



イチゴ味だけこんなに買って…。


途中で飽きて食べなくなる俊が、簡単に想像できる。






「こんなに沢山…誰が食べるの?」



「俺。」



「で、俺が払うのか。」



「んじゃ、俺が払う。」






俊は黒い、これまた高そうな財布を取り出し、中から一万円札を抜き取った。





今までお金を出したことなんてなかったから、てっきりお金がないのかと思ってた…。




俊は俺に、一万円札を渡す。





「何?もしかして…買って来いってこと?」





俊は黙って頷いた。

俺は、一万円札を俊に返す。





「…自分で買いに行きなよ。」



「あのな…俺が行ったら、オバチャンがビビんだろ。」



「あぁ…なるほどぉ。」






今日に限って、やくざらしくサングラスをかけるわ、スーツ着てくるわだし…。


しょうがなく、俺は一万円札を持ってレジへと向かった。






俊も俊なりに考えているんだ。


また1つ、俊のことを知り、また一歩、俊に近づいた気がした。










     なぁ俊



    本当は俺

  全然近付いてなんか

   なかったんだ





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ