本編
□第五話
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またシーツに染みが出来た。
洗っても、漂白しても、中々落ちてくれない血痕。
俊が汚す度にシーツを変えていく。
今度シーツ代でも要求しようかな。
なんて、せこい事を考えつつ、俊の手当てをし、シーツを新しいのに変えて、また俊をベッドに寝かせる。
体が重い。
頭の中は真っ白で、その中にゴチャゴチャと、今考えなくてもいいような事が涌いてくる。
目には俊の寝顔さえ映らない。
ただ真っ暗だった。
俺にどうしろってんだ?
こうして怪我して帰ってくるお前を、ただ治療し続けろと?
そんなのに、俺がいつまでも耐えられる訳がないだろう。
患者と医者の関係なんて、もうとっくの昔に飽きている。
俺達は、たったそれだけの関係じゃない。
俺はもう医者ですらない。
ましてや君は、患者なんかじゃない。
もう血なんて見たくもない。
もう傷つく君を見たくはない。
なら?
「元を…絶つ。」
そっと、眠っている俊の青白い頬をなでる。
「行ってきます…。」
俺は静かに家を飛び出した。
真っ直ぐ、目的地だけに向かって走る。
君の為なのか
自分の為なのかも
分からないまま