本編
□第三話
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焼肉を一緒に食べて以来、俊は毎日のように俺の家に来て、ご飯を食べている。
毎日毎日、栄養を考えて作るのは大変だ。
それに俊は、食べるだけ食べると寝てしまう。
片付けは今まで一度もしてもらったことがない。
恩を仇で返す奴…
もぉー牛になっちまえ!!
「仕事は?ま、まさか…サボってたりしないよな…。」
「おぅ!大丈夫、大丈夫♪最近平和なんだ。」
と、俊は手をヒラヒラと振りながら言った。
「平和…ね。」
ニュースでは毎日のように、人が亡くなったなど暗い内容が放送されている。
今日は小学1年生の女の子が殺されて川に捨てられていたというニュースが放送されていた。
犯人はまだ捕まっていない。
女の子の両親は、一体どんな気持ちなんだろうか。
考えたところで、俺なんかが分かるはずもないだろう。
彼女と自分の子供
そこにどれ程の差があるのかも、分からないのだから。
「……」
「どぉーした?ボーっと突っ立ってぇ…早く飯ぃー。」
「…お前って、考えることないのか。」
「いやぁ、俺は毎日色々考えてっぞ。」
「例えば?」
「…飯とか…肉とか……まっ、色々だ。」
「例を2つしか上げられないくせに…それは色々じゃないだろ。」
「2つも出したんだっ!凄いだろ!?」
「…凄いんだ…。」
「おぅ!」
俊はふんぞり返っていた。
食べ物のことしか考えてないのに…。
褒めることは決して出来ないし、凄いと感心することも出来ない。
むしろ呆れるしかないだろう。
深い深いため息をつく。
「とにかく早く飯ぃ!!」
「はいはい。」
パタパタとリビングに向かうと、後ろから俊がペタペタとついてきた。
…裸足ですか。
「俊、出来るまで時間かかるから、雑誌でも見てたら?」
「もう全部見た。今日の飯何?」
「…そうだなぁ…」
買い物袋を拾い、リビングに入る。
何を作るか考えて材料を買ってきたのに、すっかり忘れてしまった。
冷蔵庫の扉を開けて、何を作ろうとしたのか思い出そうとしながら、買った物を入れていく。