黒崎一護夢

□Fortune Bell
2ページ/4ページ

「一護…?」
郁はしばらく不思議そうに着信元を示すディスプレイを眺めていた。



郁と一護は中学のとき同じクラスで、一度一緒に体育会の実行委員を務めたことがある。
最初は奇抜な髪色の同級生に嫌悪感すら抱いていた郁だが、彼女と一護は意外に馬が合い、
最終的には携帯の番号を交換するほどに仲が良くなっていた。

そして郁と一護は同じ高校に進学したのだが、クラスが違うこともあり、大分、疎遠になっていたのだった。



「…はい、山吹ですけど」
数秒後にやっと通話ボタンをプッシュした郁。

久しぶりの同級生との会話に、少し緊張してしまっていたのかも知れない。

そして受話器の向こうから聞こえる、一護の声。

「郁、今、時間は大丈夫か」
「え?え、ええ、まぁ」

郁は、左目で冷めそうなおでんをちらちらと気にしながら答えた。

「今、公園前にいるのか」
「公園…。50m先ぐらいにあるよ」
「…今からそっちに行くから、それまで待っていてくれねえか」
「…分かった。待ってる。でも急いでね、おでん冷めちゃうから」
「おう」

俺はおでん以下かよ…。

と、苦笑いを浮かべつつも、一護は郁が待つ弓沢児童公園に急いだ。
 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ