黒崎一護夢

□Chocolate Lilyyarn
2ページ/2ページ

汚れまくった調理器具と、板チョコの紙パックの山。
その脇に何本も立っている、バニラエッセンスやシロップの瓶。

「ああ!黒崎!!本当ありがとう!!」

郁のチョコまみれのエプロンを見て、一護ははじめて“助けて”の意味を理解した。

「まさか、お前、これを俺に手伝えと?」
「そうそう!そうなの!チョコケーキ!!」
「…お前、人使い荒いなあ(笑)…。ま、いいや。手伝ってやるよ」

そう言いつつ、一護はボウルを手に取った。
チョコレートケーキぐらいなら、妹の遊子が
作っているのを見たこともあるし、手伝ったこともある。

「じゃあ、まず量りに、小麦粉」

郁が、感激したようにうなづいて言われたものの準備を始めた。

…そういえば明日は、2/14だっけか。
ぱたぱたと走り回る郁を見て、ふと、そんなことを考えた。

こいつは、誰にこれをあげるんだろう。
同じクラスの誰かか、部活の先輩か。
様々な考えが浮かんでくる。

俺もあまり贅沢言えねえけど…、
せめて、郁が焼いたケーキ、食べてみてえな…。
手伝ったのだから、其のくらいのワガママは叶ってほしい、と思った。

「黒崎ー!!焼けたよー!!」
しばらくして、少し離れたところから、郁の嬉しそうな声が聞こえた。

「そうか!」
「…あ、でも、ちょっと待って!」

郁はそう言って、何やらカサカサと
音を立て始めた。

「はい、これ。手伝ってくれたお礼!」

一護がテーブルに目を向けると、今しがた焼きあがったケーキと、ティーカップが置かれていた。

何となく、嬉しくなった。

「サンキュ。郁。」

一護は久しぶりに、にこ、と心底嬉しそうに微笑んだ気がした。


END
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ