Daily-Glue.

□19.何も言えなくて
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修学旅行二日目の、班別自由行動でのこと。

あらかじめ決めておいたスケジュールを早々に片付けてしまった雛森たちは、宿泊先のホテルに帰ろうとしていた。

だが、その道中で女二人…雛森と、井上織姫の足と、視線がぴたりと止まった。
彼女たちの視線の先には、(わりと)高くそびえ立つ、京都タワー。

「雛森さん」

織姫が、瞳を輝かせながらタワーを指さす。
雛森も嬉しそうに頷き…かくして、女二人の無言の協定が結ばれた。

「檜佐木さん、石田くん!」

雛森が、先を行く男二人…檜佐木と、石田を大声で呼び止める。

雛森が檜佐木をくん付けでなくさん付けで呼んだことについては…スルーしておこう。


呼び止められ、既にスクランブル交差点を渡り終えてしまっていた二人が、怪訝そうな表情で振り向いた。

「あのね、織姫さんとあたし、あのタワーに上りたいの!!」
「そうか、だったら二人で行くといい」

表情変えず、淡々と返答する石田。
ムッとする雛森。

再び彼女に背を向け歩き始めた男二人。

班員は別行動を取らないという規則さえ分からないのか、と呆れた表情の雛森。
隣で織姫が、すう、と大きく息を吸うのが聞こえた。


「ねえ、二人とも。付き合ってよ!!」


交差点に響く、織姫の叫び声。
雛森、檜佐木、石田の間に流れる、妙な沈黙。

自分の今の発言が、取り方によっては爆弾発言になることなど、織姫は知る由もない。

「…織姫さん…。やっぱりあのタワーに上るの、やめましょう」

雛森が、げんなりした感じで横断歩道を渡り始める。

「えー…?どうして?」

至極悲しそうな表情を浮かべる織姫。



これほど道行く人の視線が痛かった日は無いよ…。
と、雛森は苦笑い。



そう、それは、


京都の中心で愛を叫ぶ…。
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