Daily-Glue.

□5.何でだああぁあ
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始業時間10分前に教室に駆け込んで、慌てて自分の座席に腰を下ろす。
テキストとノートを鞄から取り出し、ちょっと、一息。

全速力で走ってきた所為か、髪が、雨水に濡れてぐしゃぐしゃだ。
私はハンカチである程度水滴をふき取った後、手櫛で髪を整えた。
しばらく後、ふう、と息をついて右を見た私の目に、…信じがたいものが映りこんだ。

「…ひ、つ、が、や !?」

思わず、片言になってしまう。母語なのに。

日番谷は確か、この塾には来ていなかったはず。それが、どうして。
「あの、」
私は自分の横に座る男子生徒の肩を、つんつん、と人差し指でつついてみた。
「あの、日番谷、冬獅郎、君?」
「…あぁ、鈴平紅香。何でここにいるんだ?」

…この前の選択授業のときと、よく似た会話が繰り広げられる、予感。

「いやちょっと待って、それはこっちの台詞よ」
「鈴平お前、ここの塾生なのか」
「あ、うん、一応ね。ところで日番谷は何でここに居るの?」

もともとこいつは、頭は良い方だ。
塾に来る必要性は無いと思う、いやむしろ来ないでくry

「俺、今日からここに通う事になったんだよ。宜しくな」

そんなにぬけぬけと宜しく、って言われても。

しかもここのクラスは、通称Sクラス、
…自分で言うのも何だけど、この塾では一番成績上位のクラスなんだ。
そのSクラスに、いきなりポンと入ることが出来るとは。
つくづく凄い奴だと、素直に思う。

「…こちらこそ、宜しく」

結局、またこの前と同じオチ。
でもまぁ、深く考えすぎたら、私の負けだ。
ここはもう何も考えない事にしよ…

「鈴平」

意識を自分のテキストに移そうとした瞬間、また声を掛けられる。

「予習、たまには写させてくれよな」

…ホントに何を考えているんだ、こいつは。

「…ごめん、私ポリシーとして予習はしないんだよね…」



日番谷が、全力で困った顔をしていた。
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