学園生活

□凍てつく昏鐘 下
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…安らかな顔。
私が琴音さんの棺を覗き込んで、最初に思ったこと。

琴音さんのお母さんから、
私は琴音さんの夢を、聞いていた。
…弁護士になること。

毎日深夜3時まで勉強していて、起床時間は朝6時だったらしい。
その上高校でも、生徒会執行部の副会長をしている、という。

女子なのによくそんな生活に耐えられるよなと、私は正直なところ、琴音さんを尊敬していた。


それなのに。


あんなに優しくて綺麗だった琴音さんは、もうここにはいない。



少し蒼くなりかけた彼女の顔を見て、私は思わず、声を上げて泣き叫びそうになった。

…憧れてたのに。
私は貴女に憧れて、中学の生徒会に入った。
私は幼い頃から貴女の背中を見て、生きてきた。
それなのに。…どうして。






「副会長の激務、ご苦労だったな、…時枝」

ふいに私の左から、知らない男性の声が聞こえてきた。
…琴音さんの高校の、会長さん、かな…?


話してみたい。そう、思った。


「あの、私、興津美咲って言います。少し、お話させていただけませんか…?」
男性は、見知らぬ女子中学生に話しかけられて少し驚いたような表情を見せたが、すぐに平常に戻り、軽く頷いてくれた。

「俺は、日番谷冬獅郎だ」

 
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