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□スパークリング・ガール2
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「だいたいねぇ、誰のせいでこんな顔してると思ってんのよこの馬鹿。
っつーか近寄るな、馬鹿が伝染る。」
「誰が馬鹿だ誰が。少なくともお前よりは頭良いだろ俺。」
「勉強うんぬんのことを言ってんじゃないのよ私は。」
じとりと海を睨みつけてやると、奴は意味が分からないとばかりに口をへの字に曲げた。
そういう所が馬鹿だと言っているんだ。というか子供。
「あんたが昨日クラスマッチ優勝でハイになったか知らんけど、公衆の面前で肩なんか組んできたから私の15代目上履き様が華道に良く似合う剣山になったんですけど。」
「この前は砲丸投げにぴったりな石詰め上履きになったんだっけ? 大変だな。」
「主にあんた達のせいだって分かってる?」
どこからどう見てもイケメンな兄弟と家が真向いで、それこそ物心つく前から常に一緒にいる。
お互い秘密なんか通用しなくて、家族ぐるみのお付き合い故に互いの家も顔パス&勝手に家に上がれる。
まるでどこかの漫画や小説みたいなオプションだ。至れり尽くせり。
けれど、これって明らかデメリットしかないことにお気づきだろうか。
ちょっと仲が良いからって女子達からは煙たがられるし、男子は男子でこの兄弟のせいで失恋したとかなんとかで何故か私にいちゃもんつけに来るし。
そんなトラブルをなぎ倒していくうちに(元々有段だったけれど)昔からやっていた剣道の腕が上がるくらいが私に与えられる唯一のメリットだろうか。
とにもかくにも。
私の悩みの種の9割は確実にこいつらにある。絶対に。
「まーたそうやって人のせいにしてー。
良いじゃん、お前何気に強いし。つーか、それくらい神経図太くなきゃ俺らの幼馴染は務まらないか。」
「褒めてんのか貶されてんのか分かんないんだけど。」
呆れの思いをたっぷりと込めて海を見やると、奴はわざとらしく肩を竦めた後意味深な笑みを浮かべる。
「あぁ、悪いな。迷惑かけてるのは分かってんだけど。」
「なら改善する努力を見せなさいよ。
せめて整形してもっと平凡な顔になるとか。」
「その提案のどこがせめてになるんだよ。
まぁ仕方なくね? だって俺卯月のこと愛しちゃってるし。」
だからこうしてくっつきたい、とか激しくわけの分からないことを言われたかと思えば、あくまで優しく肩を抱かれる。
その光景に女子達は悲鳴を上げた後、視線はもはや人一人殺せるんじゃないかっていうくらい鋭くなった。
知っている。
このクソ野郎は分かっていてやっている。
状況をこの上なく楽しんでいるのだ。絞め殺してやりたい。
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