斑シリーズ
□お題でお話A
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しかし信じがたいことに、意織はそんな母が大好きなようだった。
もっとも、本人の口から好きだと言う言葉は一度も聞いたことはない。
しかし、言葉にしなくとも、同類にはわかってしまうもの。
意織は、母のことが、気を違えるくらいに、好きで好きでたまらない――と。
(私が、そうだから)
その意織はと言うと、現在立ち止まってくれてはいるが、話を聞いているのかいないのか、淡色の眸をこちらに寄越しているだけだ。
「ちょっと、私の話聞いてます!?いい加減にあのババァとは別れて私と…」
パンッ。
弦瑠の発言は、強い平手打ちの衝撃によって遮られた。
相手は勿論意織だ。
「な、何すんのよ!」
「それ以上、桧野さんを侮辱するな。桧野さんを口汚く罵っていいのは、私だけだ」
意織の双眸が、凍てつくように冷たくて、弦瑠の背筋も凍りそうになる。
「な…によそれ…。ふ、ふん!いかにもあのババァが特別って言いたいワケぇ?でも私だって、意織さんのこと特別なんだから!」
「…特別…ね」
そう含み笑いをするが早いか、意織は弦瑠の腕を乱暴に掴み、口内をぐじゃぐじゃに犯し始めた。