斑シリーズ
□お題でお話@
2ページ/3ページ
「にゃんにゃんにゃーん。ふふっ。さっちゃんはかわいいね〜美人さんね〜」
「桧野さん。さっきから何濁った猫なで声出してるんですか。警察呼びますよ」
いつもの料理教室の帰り。
恋人である彼女は、私のマンションに着いたと同時に、私の飼い猫を執拗なまでに撫で回し始めた。
ただでさえ甘い声を更に甘くし幼稚な言葉を発しながら、まるで私などいないかのように、一心不乱に猫だけを愛でていた。
――時間にして約15分。私は放置され続けたのだ。
「意織ちゃんてば相変わらず毒舌ね…。何で警察呼ばれちゃうのよぉ」
「今にもねこ鍋にして食べそうな勢いで撫でくり回してるからです」
「しょうがないじゃないの〜。さっちゃんてば、ほんとに食べちゃいたいくらい可愛いんだもの♪ちっちゃくてふわふわで〜」
ねっと弾む声と同時に、響いた水音。
それは桧野さんが猫の口にキスを落とした音に違いなかった。
「…なに…してるんですか?」
声が沈む。
桧野さんの唇が、他の何かに触れる。
たったそれだけのこと、だけど、たったそれだけで、私の理性の壁は砕け散ってしまう。
「な、なぁに意織ちゃん。瞳孔が開いてるみた…きゃっ」
動物は流石に鋭い。
静かに発せられている私の殺気を感じたのか、猫は桧野さんの腕からスルリと抜け出してしまった。
猫すら空気を読んだのだ。
…それなのに。
「あ、さっちゃん待…きゃわっ!?」
愚鈍にも、まだ物欲しげに猫を追う桧野さんに腹が立ち、私は乱暴に、桧野さんの小さな肉体を床に組み敷いた。
「い、意織ちゃん…?」
「そんなに猫が好きなら、いっそのこと貴女も猫になっておしまいなさい。私が餌からトイレの躾まで、全部面倒見て差し上げますから」
「な、なにを言って…きゃああっっ」
返事など聞かず、私は桧野さんの白いブラウスを裂くように脱がし、ブラジャーを剥ぎ取り…それから今に至る訳だ。