拍手お礼シリーズ『チャレンジ1000』

□福やらい
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小狼のマンションはほんの数分前とは打って変わった不穏な空気が流れていた

「ほぇ、ダメ?」
「ダメだ」
この二人には珍しいやりとり 頑として拒否を繰り返している
さくらの右手には福豆の袋 左手にはお子さま用の、輪ゴムで耳に掛けるファンシーな鬼の面 何処にでもある節分の風景だが
「どうして‥?普通に『豆まき』しよって言っただけなのに‥」
「豆まきをすると家の中を魔払いするだろ 追い払われたら」
小狼は部屋の角や、テーブルの端などをちらりと見た
「大変な事になるんだ」
「??」
「『見た』方が早いな さくら、『幻』のカードで俺のイメージを伝えるから」
さくらは腑に落ちないまま封印を解除した
「彼の者の想像を我に伝えよ、『幻』!」

☆只今李小狼による、室内に棲む精霊が狂暴している恐怖映像(幼児向け)をお見せしております 暫くお待ちくださいませ☆

「ほえぇぇっ〜怖いよ〜!!」
想定外の恐怖に小狼に抱きついて、怯えるさくら
「な、だから此処では『豆まき』は駄目だからな?」
現実を認識させるように、小狼はさくらの肩や腰に回していた腕に力を入れて抱き締めた
「はい‥」
まだ怖いのかピタリと動かないさくら

「落ち着いたか?」
身体は上気しているけれど、先程までの強張りは消えた
「うん!‥じゃあ、今からグレープ焼こ?」
「は?」
「その年の良い方角に向かって巻いている長い食べ物を食べると、一年間幸せになれるんだって! 精霊さん達もこれなら良いよね!」
「それなら問題はない‥な」
「ね、決まり!早く焼こ!」

バニラの甘い香りがフライパンの上で熱せられてダイニングキッチンに充満した
ホイップクリームとチョコやフルーツが芯になったクレープふたり分 幾つかの小さいサイズも同じように巻いてある
「それじゃ‥」
「「いただきます」」
無言でクレープを頬張りながら小狼は、はた‥と気が付いた
―あれ?俺、人数教えたっけ? どうみてもさくらが焼いた数とピッタリ‥だよな?
其所は『幻』で見せていない筈‥
偶然?それとも天性の資質? 本気で魔力を使ったら足元にも及ばない予兆なのか‥?
―〜〜ッ!さくらをずっと護れる力が備わりますように! それから‥あっ、もう無い!

叶うなら、一本と言わず何本でも食べたいと思った小狼でした
2010.01.30より
2010.02.04迄

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