鳴門短編

□キミ不足が深刻です
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「……おい」

「んー?」


おとなしく読書を始めたというのに、アスマはくわえ煙草のまま声を掛けた。

生返事をしつつ、右目は上下に往復を繰り返す。


「おいカカシ」

「だからなーによ?邪魔しないでちょーだいヨ」

「ベタだけど、あんた本逆さまよ?」


言われてみれば上下が逆転している。
どうりで内容が頭に入ってこなかったわけだ。


「ダメだな、こりゃ」

「重症ね」

「「………ハァ。(本当に早く帰ってきて……)」」


カカシに憐れみの視線を向けながら、紅とアスマは同時に息を吐いた。



不意に、ガラスをつつく音がする。
見れば窓の外に伝書鳥がいる。足には白い文がくくりつけられていた。


「何かしら?」


紅は窓に近付き文を受け取る。
それを確認した鳥は、静かにその場を飛び立った。


「カカシ」


誰からだと催促するアスマの視線に、紅は女々しさ満点の男の名を呼ぶ。

緩慢な動きで顔を上げたカカシは、力なく返事をした。


「なーによ?」


視界に捉えた紅の口角が、愉しそうにつり上がっている。

ピラピラと見せびらかすように揺らされる文に、自然と目がいってしまう。


「あんたによ」

「へ?」

「ユウカから」


愛しい彼女の名を聞いた途端、窓際に走り奪うように文を受け取った。

先ほどまで手に持っていた愛読書は、無造作にソファの上に放置されている。


折り畳まれた文を素早く、かつ慎重に広げた。
その顔は、歓喜とも緊張ともつかない複雑な表情をしている。

紅はそんなカカシの様子に笑みをこぼすと、そそくさとアスマの隣に戻っていった。


「……ラブレター?」


飛び込んできた文字は、近況報告と彼の身をを案ずる内容だった。

思わずニヤけてしまう口元を空いた方の手で隠す。


彼女はまだしばらく帰ってこれないらしい。


「返事書かなきゃな」


カカシは晴れ渡る青空を仰ぎ見た。


定番だけど『こっちは元気にやってます』?

第七班はドタバタ忍者が騒がしくて、アスマと紅は相変わらずバカップルで。


「(あーでもとりあえず)」





キミ不足が深刻で

(早く帰ってきて?)

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