鳴門短編

□雨と君と赤い傘
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突如降り出した雨に、ユウカは足止めを食っていた。

アカデミーの屋根の下で、雨足が弱まるのを待とうと雨宿りをしていたが、それは一向に収まる気配はない。


「ハァー、今日は雨降るって言ってなかったじゃない」


当たらない天気予報に文句を言う。

言ったところで状況が変わる訳でもないが。


「どーしよーかなぁ」


ユウカは空を見上げた。

重たい灰色の雲は、しばらく晴れそうにない。


「濡れて帰るしかないのか……」


ため息と共に項垂れた。

しかしいつまでもこうしているわけにもいかず、ユウカは意を決して足を踏み出そうとした。


「おい、ユウカ」

「へ?」


急に名前を呼ばれて、出しかけた足を引っ込めた。


「サ、サスケ?何やってんの?」


声のした方を見遣れば、仏頂面したサスケがこちらに近付いてきていた。

その頭上には、真っ赤な傘が広がっている。


「私の傘?」

「行くぞ」

「え、え?まさか、迎えに来てくれたの?」

「フン、だったら何だ」


顔を逸らしながらそう言ったサスケの顔が、ほんのり赤く染まっている。

それが照れているのか、赤い傘が反射しているのかは定かではない。


でも、前者であればいいと思う。


「あれ?でもサスケの傘は?」


サスケの手には、紺色のはずの彼の傘はない。

ユウカな言葉に、サスケは口角をつり上げた。





いにく傘
1本しか持ってない

(え、ちょ、それって)
(いいから行くぞ)


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