鳴門短編

□恋の病
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「昨日は筋肉痛、一昨日は間接痛、その前は頭痛、その前の前は腹痛でしたね」


カルテを見ずに、ユウカはため息混じりに吐き出した。


「ちゃんと覚えててくれたんだーね」


それだけで、満たされた気分になる。


「で、今日はどんな仮病ですか」


医師にあるまじき言葉を口にする。

端から仮病だと決めつけているユウカには、それを理由付けるだけの確信があった。

九尾の少年を診た日から、この男は何かしらの理由を作って毎日毎日ここに通ってくるのだ。


「今日は、んー、どうしよっかなぁ」


自分の症状を話せと言っているのに悩み出す彼に、やはり仮病だったかと視線を逸らす。


「じゃぁ、心臓が痛いです」

「ハイハイ。今すぐ家に帰って寝てれば治ります。お大事に」


さっさと診察を切り上げようとして、さも忙しいとでも言うように立ち上がった。


「ユウカセンセー」


その手をカカシが掴む。

そっと優しく触れた手は、見た目通り細くて、手袋越しに彼女の体温を感じた。


「あれ?ユウカセンセー脈速くない?」


掴んだ腕から伝わる彼女の鼓動が、いくばくか速い。

それは彼女のせいで高鳴り続ける自分のそれとよく似ていて――


カカシはニヤけそうになる口元を必死に隠した。


「なんか心臓痛いし、動機はするし、なんか熱っぽいし、幻覚は見るは幻聴は聞こえるわ」


そう言いながら、カカシはゆっくりと立ち上がる。

掴んだ腕はそのままに、彼はユウカに近付いた。


「は、たけ、さん……?」


意味不明なカカシの行動に、ユウカはその場に立ち尽くしていた。


捕まれた腕に意識が集中してしまう。

顔が紅潮していくのを感じつつも、どうしていいか分からない。


「てかね、俺さ、ユウカセンセーのこと」


空いている方の手でカカシは口布を外した。

距離を縮めていく。

僅かに薫ってくるユウカのシャンプーの匂いだろうか。

カカシは、硬直するユウカの耳元に口を近付けた。





好きすぎるんです
コレって病気ですか?

(処方箋は君がいい)

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