鳴門短編
□恋の病
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木の葉病院一般外来――
この里一の技師、はたけカカシは、待合室の椅子に座り愛読書を読み耽っていた。
だが、暗記してしまった内容など今は頭に入らない。
「はたけカカシさん、中へどうぞ」
看護師に呼ばれ、パタンと本を閉じた。
のんびりとした動きで立ち上がり、診察室を目指す。
ドアに掛けた手が、心なしか震えていた。
柄にもなく緊張しているらしい。
「(情けなーいね)」
自嘲気味に笑って、カカシは指先に力を込めた。
「ユウカセンセーこんにちは」
「はたけさん、またあなたですか」
ほとんど隠れてしまっている顔を綻ばせて挨拶すれば、呆れたような声が返ってきた。
それすらも嬉しくて、カカシの頬はさらに緩む。
ユウカは、木の葉病院一般外来を受け持つ医師だ。
修行中に怪我をしたナルトに付き添ったのがきっかけで、カカシは彼女の存在を知った。
それは所謂一目惚れというやつで。
テキパキと処置を施す彼女の細い指先や
真剣な横顔
白衣の襟から覗く白いうなじに
カカシの心は囚われてしまったらしい。
「ユウカセンセーは今日も綺麗だーね」
「ハイハイ、いいから座ってください」
口説き文句も一蹴された。
ユウカの姿を見るなり高鳴った鼓動は、彼女と言葉を交わすだけで早くなっていく。
カカシは促されるまま、ユウカの向かいに腰を下ろした。