木の葉の紅い狐
□第参話
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爽やかな風が吹き抜ける。
ユウカは公園の片隅のベンチに腰掛け、ぼんやりと空を眺めていた。
絵の具をこぼしたような真っ青な空に、真っ白な雲が気持ち良さそうに漂っている。
一様に同じ方向へと向かう雲は、今が平和だと言うことを象徴するかのように、ゆったりと優雅に流れていた。
どこか遠くで、子供達の楽しそうな声がする。
活気ある商店街の喧騒が、自然と耳に届いてくる。
「平和、か……」
ユウカはぽつりと呟いた。
街には笑顔が溢れている。
忍ではない一般の住人も、あの頃に比べだいぶ増えたように思う。
正直なところ、この里に良い思い出なんてほとんどない。
だけど、ユウカは木の葉の里が大好きだった。
身元の判らない少女を引き取り育ててくれたこの里を、守りたいと思った。
子供達の笑顔は、平和の象徴だった。
ユウカは遠くに見える火影岩を見つめる。
「私は、ちゃんと守れているんでしょうか?四代目……」
返ってくるはずのない答えを、どこかで期待していた――