木の葉の紅い狐
□第弐話
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本日第七班に与えられた任務は、里からだいぶ離れた農村で見つかった巻物を回収しに行くというものだった。
離れているとは言っても、忍の足ならそう遠くもない距離だ。
足を踏み入れた小さな村は、ゆったりとした農村独特の時間が流れていた。
「すんませんのぉ、遠いところをわざわざ」
「いえいえ、これも仕事ですから」
村で一番大きな屋敷を訪ねると、人の良さそうな老人が出迎えてくれた。
彼がこの村の長であり、今回の依頼人だ。
通された座敷でには年季の入った掛軸が堂々と飾られている。
「それで、ご依頼の巻物というのは?」
茶菓子を勧める老人に、カカシは本題を切り出す。
相手のペースに任せてしまっていては、いつまで経っても任務は終わりそうにない。
それが老人なら尚更だ。
同じ話を何度も聞かされる羽目になってしまう。
「そうでしたそうでした。これマユ、あの巻物を持ってきなさい」
長老の声に、すぐさま隣室に面した襖が開いた。
依頼人の孫であろう娘は、30センチほどのそれをカカシに手渡す。
すぐに彼は留め紐をほどき、中を改めた。
広げた巻物は白紙同然。
中央に薄墨で描かれた木の葉のマーク以外、文字らしいものは見当たらなかった。
「これはどこで?」
「外の倉ですじゃ。掃除をしておったところ見たこともない巻物を発見しましての。白紙とはいえ木の葉の印がありました故、ご連絡した次第。じゃが、それがいつ倉に紛れ込んだのか、ワシには皆目検討がつかんでのぉ」
カカシが質問するより先に、依頼人は必要な情報をペラペラと喋ってくれた。
「カカシ先生、それ何なんですか?」
「真っ白だってばよ」
彼の後ろから巻物を覗き込むナルトとサクラは、素直な疑問を口にした。
「白紙じゃなーいヨ」
ふざけたような口調で、カカシは手に持つ巻物にチャクラを流し込んだ。
途端に、真っ白だった紙に文字が浮かび上がってくる。
文面は暗号化されていたが、巻物自体に忍にしか読めないような細工がされていたようだ。
「確かに、ウチの里のもので間違いないようです。ご連絡ありがとうございます」
目を細め感謝の言葉を口にすれば、老人は気を良くしたのか饒舌になる。
仕事があるからと、これ以上のもてなしをやんわりと断ると、彼らは屋敷を後にした。