木の葉の紅い狐
□第弐話
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「遅い!!」
「遅いってばよ!!」
「チッ、ウスラトンカチが」
サクラ、ナルト、サスケの第七班は、相変わらず時間通りには現れない上官に悪態をついた。
「いや〜すまんすまん。今日は」
「「はい嘘!!!」」
言い訳をする間もなく部下達に後ろ指を指されるカカシは、ヘラヘラと笑いながら橋の欄干から地面に足を着けた。
「早く任務に行くってばよ!」
「ナルトうるさい!少しは落ち着きなさいよ!」
興奮するナルトの後頭部に、サクラの鉄拳がヒットする。
殴られた頭を押さえるナルトは蹲って呻き声を上げ、サスケはそんな2人のやりとりを鼻で笑う。
見慣れた朝の光景に、カカシは頬を緩めた。
「おいカカシ」
「どしたー、サスケ」
「誰だ、そいつ」
カカシの後方に鋭い視線を向けるサスケの言葉に、ナルトとサクラも同じ方向を見遣った。
「どぉも。今日から君達の任務に同行することになった、黒崎ユウカです」
ユウカは欄干に預けていた腰を上げると、にこやかな笑みを彼らに向けた。
「俺さ、俺さ!!うずまきナルト!!よろしくだってばよ!!」
「春野サクラです!よろしくお願いします!」
元気よく挨拶する2人とは対照的に、サスケは眉間に皺を寄せる。
彼は鼻息と共に小さく呟きを洩らした。
「足手纏いが増える……」
「その言葉、そっくりそのままお返しする。うちはサスケ君?」
「っ……!!」
自分の目の前、カカシの後方にいたはずの人物が、いつの間にか背後にいた。
近付けられた唇が、耳に触れそうなほどに近い。
「!!?(コイツ……!!)」
「(カカシ先生より、早い!!)」
「(ス、スゲーってばよ!!)」
カカシ以外の3人はその早さに驚きを隠せない。
「ユウカちゃーん、あんまりサスケを挑発しないでね。こいつら単純だから」
カカシの声に、ユウカはサスケの耳元に近付けた顔を上げる。
「お前ら、ユウカちゃんは、れっきとした木の葉の上忍だヨ。だから安心しろー」
カカシの言葉に、小さな忍達は警戒心を解いた。
ユウカが第七班の任務に同行することになったのは、三代目火影による根回しだった。
彼女個人に充てられたもの、もしくは暗部からの依頼時以外は、極力第七班に同行するように命じられている。
これはユウカの監視兼護衛任務を担うカカシの負担軽減への配慮でもあった。
「さてと、んじゃ、そろそろ行くとしますかねー」
カカシは愛読書を手に里の外へと通じる門へ向かった。
生徒達とその後ろに控えたユウカは、相変わらずやる気のない銀髪の忍に続いた。