木の葉の紅い狐
□第壱話
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清々しい朝の空気が、木の葉の里を包み込んだ。
朝靄の中、どこからかすずめの鳴き声が聞こえてくる。
木の葉の上忍はたけカカシは、頭まで被った布団の中で寝息を立てていた。
「ん゙〜……」
その静寂を破るように、唐突に窓ガラスをコツコツ叩く音が響いた。
カカシは身じろぎしながら布団から顔を出すと、音の主を見遣る。
中途半端に閉まったカーテンの隙間から朝日が差し込んでいたが、その朝日を背にして小さな黒い鳥がいた。
呼び出し用の忍鳥の姿を確認した途端、彼はうんざりしたように息を吐く。
「……(七班は今日は休みでしょーよ)」
ということは、自分個人に宛てられたものだろう。
差出人は言わずもがな、この里のトップに座するあの方だ。
「……もう少し寝かせてちょーだい」
しばらく鳥と見つめ合った後、カカシはもぞもぞと布団に潜り込んだ。
正直明け方任務から戻ってきたばかりなのだ。
布団に入ってまだ数時間しか経っていない。どうせなら昼まで惰眠を貪らせてほしい。
しかしそれが許されるはずもなく、窓を叩く音が一層激しくなる。
これでもかというほど、黒い鳥は小さなくちばしで窓ガラスをつついていた。
そろそろガラスに亀裂が入ってしまいそうである。
「だぁぁぁぁぁ!!起きますヨ!!起きればいいんでしょーよ!!」
思いっきり足で布団を蹴り上げた。宙を舞った布団は無惨にもベッドの端に落下する。
バタバタと身支度を整えたカカシは、ひんやりと冷たい空気の中に駆け出していった。