木の葉の紅い狐
□第肆話
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ユウカはぼんやりと窓から覗く青空を眺めた。
もっと自分の事を大切にしてちょーだい――
お節介な自分の監視役が放った一言が、ぐるぐると駆け巡る。
あんなことを言われたのは2回目だなと自嘲気味に笑った。
そんなことを言ってもらえる資格なんか、ありはしないのに――
それでも、先ほど病室を後にしたナルト達の笑顔に、再び顔を綻ばせる。
こんな自分の為に泣いてくれるなんて、思ってもいなかった。
きっと彼らは自分の過去など知りはしないのだろうけど、彼らは彼らなりに何かを感じ取っているのだと思う。
それでも、あの子達は言ってくれた。
私は、私だと――
過去も立場も関係ないのだと――
大切なものなんか、この里だけで充分だった。
それ以上のものなんて、望んではいなかった。
だが、知らない内に
大切なものが増えていたらしい。
子供達の笑顔を守りたい。
ナルト達の明るい未来を護ってやりたい――
ユウカは離れてしまったぬくもりを確かめるように、ぎゅっと掌を握った。
この里は
必ず守り抜く――
その為だったら
この命
いくらでもくれてやる――