木の葉の紅い狐

□第肆話
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薬品の臭いが充満する病室のベッドにユウカは横たわっていた。

腕に繋がれた点滴が、一定のリズムで体内に吸収されていく。

ユウカはぼんやりと、落ちていく点滴を眺めていた。


「―――――!!?」


なにやら廊下が騒がしい。

バタバタと走る足音は徐々に近づいてくる。

それは、ユウカの病室の前でピタリと止まった。


「ユウカねぇちゃん!!大丈夫だってばよ!?」

「バカナルト!!病院なんだから静かにしなさい!!」

「ウスラトンカチ」


ノックもせずに駆け込んできたナルトに筆頭に、サクラとサスケも病室に入ってくる。


「な、んで……?」


まさか自分の病室を訪ねる者などいないと思っていた。

彼らの登場に、ユウカは開いた口が塞がらない。


「起き上がって大丈夫なのか?」


呆然とするユウカに、さりげなく彼女のすぐ傍に立ったサスケが問う。


「ユウカさん、ごめんなさい!」


その隣でサクラが頭を下げた。

彼女の顔は、今にも泣き出してしまいそうに歪んでいる。


「大丈夫だよ。それに、これは私が勝手にやったことだ。だから、気にすんな」


そう微笑んで桃色の髪を優しく撫でてやれば、サクラの頬を綺麗な涙が伝う。

ユウカはその滴を親指で拭ってやった。


「やっと笑ったってばよ」


嬉しそうにナルトが言った。

その言葉にサクラも微笑み、サスケも口角を上げる。
3人の言葉と笑みの理由が分からず、ユウカは小首を傾げる。


「あんたが何を気にしてるのかは知らないが、俺達はあんたが思ってるほど弱くない」

「だから、作り笑いなんかしないでください」

「ユウカねぇちゃんはユウカねぇちゃんだってばよ!!」


3人の言葉に体が震えた。
鼻の奥がツンと痛み、目頭が熱くなる。

ユウカは思わず、3人をその腕に抱き締めていた。


「わわっ!」

「ユウカ、さん?」

「っ……!!」


突然のことに、ナルト達はどうしていいかわからなくなっていた。

ナルトとサスケの頬が赤くなっていたが、本人達以外は気が付かない。


「ありがとう……」


力一杯抱き締めた。

小さく呟かれた一言に、3人は顔を綻ばせた。


しばしの間そうしていた。

腕の力を緩めれば、名残惜しそうに3つのぬくもりが離れていく。


「じゃぁ、俺達は任務に行ってくるってばよ!!」

「ユウカさんはちゃんと休んでくださいね」

「終わったらまた来る」


慌ただしく病室を後にする子供達を笑顔で見送った。

3人の姿が見えなくなっても、ユウカはしばらく手を振り続けた。






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